籠の鳳 AnotherSide

籠の鳳 AnotherSide



 急に連絡を入れてきた弟子に情報と頼まれた『物』を転送してやる、弟子は申し訳ないが嬉しい、という感じの複雑な表情を浮かべ、礼を言うと通信を終わらそうとする。

「ちょいまち!」

・・・何ですか?

「一個だけ約束せぇ・・・」

 震える拳を隠しながら言う・・・

「あの技だけは使うんやない・・・・帯電対策のしていないお前が・・・」

わかってます・・・

 言葉をさえぎられる・・・・

俺じゃあ・・・あの武器を使いこなせないことは・・・・わかっています・・・・・・お師匠様・・・俺の我が儘きいてくれて・・・本当にありがとうございます・・・

 モニターの向こうから申し訳なさそうに言う弟子。

「あほんだら、そないな事言うとらんとはよ準備終わらしとかんかい・・・ヴィシュヌ助けに行くんやろーが」

 まるで自分で言っていないような感じで言葉を発する・・・

はい・・・それじゃ・・・

 そして・・・画面が真っ黒になる・・・・

「・・・・・インドラ・・・」

 後ろから相方が声をかけてきた・・・・

「ブラフマー君・・・まさか・・・」

 振り向いて微笑む、泣きそうな相方の顔が目に入った。

「あぽろぉ・・・お前がそないな顔してどうするんや」

 苦笑混じりに言う。

「だが・・・『アレ』を送ったのだろう?・・・・」

 ・・・・その言葉に多少体が反応する・・・

「『アレ』をお前以外が使うのは・・・・」

「アポロ・・・・」

 名前を呼び、言葉をさえぎる。

「・・・ちょっくら散歩行ってくるわ・・・・寂しい言うて追いかけてくるんやないで♪」

 おどけてそう言って相方の頬にキスをする。

「!?インドラ!!」

 相方の叫び声を背に部屋を出る。流石に・・・今は一人になりたいと思っていた・・・・・

 

 

 

 ブラフマーの依頼は・・・・ヴィシュヌの居場所を調べることと、インドラの武器である『ヴァジュラ』を貸してほしい。そういうものだった。

 ほかの武器ならいくらでも貸した。弟子といっても、もう何年も共に行動し、己の子供のように思っていた。手伝ってくれと言われれば・・・なんだかんだ言っても力を貸すつもりだった・・・だが・・・・彼の口から発せられたのは・・・『お師匠様の武器、『ヴァジュラ』を貸していただきたいのです・・・』だった・・・・

 ヴァジュラはインドラにしか扱えない・・・雷を呼び寄せる特殊な武器・・・自らの意思で電流を扱える者でも、自然界の雷は電圧が高すぎて下手をすれば己がショートしてしまうほどのエネルギーを持っている。だが、インドラはそんな危険な自然界の雷をも自在に操ってしまう。

 そんな彼専用に作られたのが三又戟の『ヴァジュラ』それを、彼の弟子は貸してほしいと言ってきたのだ。

「ほんまに・・・あほやで・・・・」

 無意識に言葉が口から出てきた・・・頬を液体が流れ落ちたような気がする・・・

 

 ・・・・・・ブラフマーは・・・死ぬ気でいるのだ・・・・・

 

 

 

 

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