籠の鳳 AnotherSide
「・・・ご苦労様、流石は元傭兵・・・良い仕事をするね・・・」 薄暗い部屋の中で二人の男が話している・・・白衣の男とアーマーの男・・・ 「んなこたぁどうでもいい・・・俺はちゃんと仕事をこなしたんだ・・・さぁ、早く渡してもらおうか・・・」 一人は微笑をうかべ、一人は険しい表情のまま手を差し出す。 「わかってるよ・・・そう焦らなくてもちゃんと渡すさ・・・・キミのおかげで今のところは終始上手く行ってるんだしね・・・」 そして白衣の男はまた笑う・・・ 「キミはほんとに良く働いてくれたよ・・・わざとあの絵を提出して手にいれやすくしてくれたし・・・、あの男をおびき出す事もしてくれた・・・君は仕事のためなら仲間も裏切れるんだね・・・」 「・・・・・・だからどうした・・・・・」 口ではそう言っているものの、アーマーの男の顔がほんの少しだけ辛そうに見える。 「キミが欲しいのは・・・これだろ?」 男は微笑を浮かべたまま小さなディスクを白衣のポケットから取り出すとアーマーの男にそれを投げて渡した。 「早く行ってあげなよ、それがあれば『彼女』は助かる」 「・・・・・・」 アーマーの男は無言でその場を立ち去った。 「・・・君も弱くなったね・・・ダイナモ・・・」 「・・・良いのですか?・・このまま行かせて・・・・」 闇から黒ずくめの男が現れる 「別にいいさ、彼の仕事は終ったしね・・・」 ダイナモに課せられた仕事・・・螺旋の描いた・・・少女の描かれた絵を入手しやすくするための工作と・・・その絵を描いた本人、螺旋をおびき出すこと・・・ 今回螺旋の出動には仕組まれた点があったのだ。それは・・・『なぜ隊長ではなく副隊長の螺旋に通信が入ったのか』だ。 任務中に緊急事態が発生すれば普通隊長であるアルマージに連絡が入るだろう。だが、今回隊員の断末魔の連絡を受けたのは副隊長の螺旋・・・裏でその工作をしたのがダイナモ・・・ 彼のこの行動には理由があった。 ・・・愛する人が出来れば・・強くなれる反面、弱くなる・・・ 「待ってろ、エイリア」 チェイサーに乗り、急ぐ彼が呟く。 彼が愛しているエイリア、彼女を人質に捕られたのだ。だが、イレギュラーハンターのオペレーターである彼女を『物理的』に捕らえる事は出来ない。そんな彼女を白衣の男はいとも簡単に人質にした。 常ににPCを触っている彼女にウィルスを流し込む、ほかのオペレーターに気付かれぬよう、彼女自身気付かぬように・・・それをダイナモだけに教える、そうすれば後は・・・ 「面白いよねぇ・・・あのディスクが本物だって言う保障はないのに・・・あんなに慌ててさ」 窓から走り去るダイナモの様子を見て、白衣の男が楽しそうに笑う。 「愛って感情は・・・本当に何も見えなくするんだねぇ・・・」 「・・・・では・・・あれは・・」 「ん?・・・ああ、本物だよ。別に彼らに恨みとかあるわけじゃないしね、手伝ってもらったんだからちゃんとお礼はしなくちゃねぇ」 笑いながら言う、それを静かに聞いているもう一人の男・・・ 「おや?・・・どうやらお客さんみたいだね・・・レプリロイドの男が二人・・・招待した覚えはないけど、せっかく来たんだからちゃんと持て成さなくっちゃね・・・」 白衣の男はパネルを操作しはじめた。沢山のモニターの電源が入り、部屋が明るくなる・・・ 「あれ?・・・・『あれ』が・・・いない?」 その言葉に黒ずくめの男が少しだけ反応する・・・白衣の男は、それを見逃さなかった・・・ 「どういう事かな?『あれ』は『彼女』をここに呼ぶための餌だって言ったよね?『彼女』が来るまで、ちゃんと見張ってろとも言ったよね?」 白衣の男の表情が変わる、今まで笑っていたのが嘘のように恐ろしい顔つきになる・・・ 「あ・・・か・・・鍵を・・・かけわす・・・」 ダンッ!! 黒ずくめの男が言い終わるよりも早く、白衣の男は彼の胸倉をつかんで壁にたたきつける。 「へぇ・・・鍵をかけ忘れたんだ・・・レプリロイドのお前がねぇ・・・」 ギリ・・・と掴んでいる腕の力が強くなる。 「また余計な感情が出てきたんじゃないだろうな?お前は僕に言われたとうり、『あれ』を見張っていればいいんだ。逃がさなければ好きにしても良いとも言ってあるだろう?」 急に腕を離す。黒ずくめの男はバランスを崩して膝を付き、咳き込んだ。 「ゲホゲホッ・・・」 咳き込んでいる男の耳元で、白衣の男は先ほどとは打って変わって優しい口調で囁く。 「・・・さぁ、早く捕まえておいで・・・お前は僕の言うことを聞いていればいいんだよ・・・そうすれば・・・」 ふらふらと部屋を出る男の後姿を見ながら・・白衣の男は呟いた・・・ 「そうすれば・・もう少し生かしといてあげるから・・・・」 AnotherSideEND |
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