Color Oils

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 全てを染める赤い夕焼けの空の下・・・イレギュラーハンターの救護班は忙しそうに動きまわっている。

「おいエックス、お前も早く治療受けとけ」

 なんとか螺旋とヴィシュヌの二人を連れて脱出に成功したゼロとエックス。外で待機していた救護班に2人を任せ、ゼロも治療を終わらせた所だった。

「・・・うん・・・でも、もう少し待ってる・・・・」

 まるで母親を待つ子供のように膝を抱え座っている彼を後ろから見ていたゼロは、ため息を付き頭をかきながら、彼に近づいた。

「お前なぁ・・・心配だからっていつまでも駄々こねてんじゃねぇよ・・・っと」

「うわぁ!?」

 エックスを軽がると担ぎ上げ、レスキュー車へと運んで行く。

「ちょ、ゼロ!!下ろせよ!!」

 肩の上でじたばたするエックスを押さえながらゼロの一喝。

「あーもう、うるせぇ!大人しくしてろ!!てめぇが治療すませねぇとあいつが上がって来た時にすぐ対処できねぇだろうが!!」

「あ・・・」

 ゼロの一言でエックスが静かになる。車内で大人しく治療を受け、すぐに外に出てはみたが・・・まだ彼女は上がって来ていないようだ・・・

「・・・きっと、大丈夫・・・だよね・・・・・・・」

 ゼロの隣でエックスはそう呟いたが、ゼロは返事をしなかった・・・

 ・・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・・

「・・・何だろう?・・・」

 初めは小さな音だったが、しだいにそれは轟音となりさらに大きな揺れも起こり始めた。

「これは・・・マズイ!総員退避!エックス!何やってるんだ、逃げるぞ!!」

「で、でも!!」

「あー!!!ったく!!世話やかすんじゃねぇ!!」

 ゼロがエックスを連れてジャンプした次の瞬間、彼等の立っていた場所は地面に飲みこまれるように沈んでいき音と揺れが完璧に収まった時、その場所には大きなクレーターが出来ていた・・・

 

「・・・・・・・・」

「?おい・・・エックス!?」

 エックスは無言のままそのクレーターに降りて行き、おそらく入り口があったであろう部分の瓦礫をどけ始める。

「・・・エックス・・・」

「・・・たのに・・・」

「あ?」

「・・・約束・・・したのに・・・・」

 エックスは泣いていた・・・泣きながら瓦礫をどける作業を続けていた・・・

「生きて・・・また会おうって約束したのに!!嘘つき!!!」

 エックスの悲痛な叫びが辺りに響き渡る・・・後はだた、彼の嗚咽と瓦礫をどける音が続くだけ・・・

 ・・・ガラガラッ・・・

「・・・誰が・・・嘘吐きだって?」

 不意に違う方向から瓦礫の崩れる音と声がした。

「あ・・・・・」

「危機一髪、助かったみたいだな・・・」

 そう言ってほとんど意味をなさなくなったメットを脱ぎ捨てる、黒く長い髪が風にゆれた。逆光で表情を見ることは出来ないが・・・・・・純白のマントは破れ、白銀のアーマーも破損が激しかったが・・・瓦礫を押しのけ、そこに立っているのは紛れもなく彼女だった。

「・・・・!!」

「おっと・・・」

 エックスは走りだし、彼女に飛びついた。その勢いで彼女はその場にしりもちをついたが、エックスの頭を優しく撫で背中をぽんぽんと叩く・・・

「心配を・・・かけたようだな・・・・」

 ・・・泣きじゃくるエックスを宥める彼女の姿はまるで聖母のようだと・・・そこにいた誰もが思った・・・

 しばらくしてエックスが落ちつくと、彼女はクレーターから外に出た。何処から出したのか、サングラスをかけている。

「・・・2人は何処に?」

「レスキュー車の中です・・・でも・・・俺達では彼等を助ける事はできなくて・・・」

 悔しそうに言うエックスの頭を優しく撫で、彼女はゆっくりと救護班の一人に話しかけた。

「・・・彼等のボディは私がいつもメンテしていたんだ・・・どうか・・・私に彼等の治療をさせてはもらえんか?」

「し、しかし・・・」

 突然の申し出に隊員は困ったようにエックスとゼロを見る。

「・・・大丈夫だ。そいつはかなり腕の立つ学者だ・・・お前等はサポートしてやれ」

「りょ、了解しました・・・では、貴女の名前をお聞かせください」

 一瞬だけ、彼女の動きが止まる・・・

「私の・・・名は・・・」

 そこまで言った時、記憶の一片が呼び覚まされる。

 

 『ねぇ母さん、どうして母さんは名前がないの?』

 『私はプロトタイプだからな。名前は必要ないんだ』

 『そんなのおかしいよぉ・・・俺にも名前があるのに・・母さんに無いなんて変だよ・・・』

 『そうは言ってもなぁ・・・』

 『ん〜・・・・よし!じゃあ俺が母さんの名前付けてあげる♪』

 『ヴィシュヌが?』

 『うん♪だって、俺の名前、母さんが付けてくれたでしょ?だからそのお礼♪』

 『・・・そうか・・・』

 『んん〜・・・母さんって、製造コードのU‐MA(ユー、エムエイ)でずっと呼ばれてるんだよねぇ・・・』

 『ああ』

 『ウーマ・・・じゃ、なんか変だし・・・・・・・・・・・・そだ!!』

 『?』

 『ユーマ!ユーマって名前はどう?』

 『ユーマ・・・か・・・』

 『・・・・嫌?・・・』

 『そんな事は無い・・・嬉しいよ・・・ありがとう、ヴィシュヌ・・・』

 『エヘヘヘ♪』

 

「・・・・・・か?」

「あ・・・・」

 ハッと我に返る・・・・目の前には心配そうに自分を見る隊員の姿。

「どうかなさいましたか?」

「いや・・・大丈夫だ・・・・・・私の名は・・・ユーマと言う・・よろしく頼む・・・」

「はい。では、ユーマさん。こちらへ・・・そのままの姿では中に入ることも出来ませんので・・・」

 ユーマと名乗った彼女は、壊れたアーマーを脱ぎ捨て汚れた体を車に備え付けられたシャワーで綺麗にすると、用意された衣服を着用し白衣を纏った。

 ・・・必ず・・助けてやるからな・・・・

 ユーマは髪をうしろにくくり、レスキュー者の治療室へと入って行った・・・







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