Color Oils
21XX年 元イレギュラーハンター17部隊隊長のシグマの反乱により多くの都市が破壊された・・・ 〜瓦礫の街〜 「おい、そっちはどうだ?」 「だめだ、全滅・・・」 「そうか・・・ん? ・・・」 「どうした?」 「おい、ちょっと来てみろよ・・・こいつまだ生きてるぜ?」 「え? うわ・・・凄いな・・・」 「しぶといよな、人間って・・・体半分潰れても生きてるなんてよ・・・」 「とりあえず・・・死んじまう前に運び出そうぜ」 「だな・・・」
・・・ドウシテ・・・静カニ眠ラセテ・・・クレ・・・ナイノ・・・?
「・・・タ・・・・ドク・・・」 遠くの方で、声が聞こえる・・・彼女はぼんやりとそんな事を考えていた。 「Dr.? 大丈夫ですか? Dr.?」 「ん・・・あ、ああ・・・螺旋(ネジ)か・・・」 彼女が今いるところ。それはもうほとんど壊れてしまって使い物にならないような資材が転がっている研究所の一室だ。 螺旋と呼ばれたレプリロイドは黄色い、いかにも重装備といった様子のアーマーを身につけていた。 「何やらうなされていた様なので・・・」 その見た目にはそぐわぬ様な優しい声で、彼は彼女に話しかける。 「昔の・・・夢を見た・・・私が・・・人でなくなる少し前のな・・・」 深く椅子に腰掛けている彼女は手をゆっくりとかざし、眺めた。 「私は・・・もう人間ではない・・・だが・・・レプリロイドでもない・・・ただの・・・・化け物だ・・・・」 そして彼を見つめ・・・ 「お前は・・・何故私の側にいる? 私はもうあの研究所の者ではない。むしろ今やあの組織を消そうとしている存在だ・・・お前を創り出したあの組織を、お前は捨てるのか?」 彼はゆっくりと彼女の前に移動し、跪く。そして彼女の手を取り・・・ 「Dr.・・・私が貴女の側にいるのは貴女があの組織の研究員だったからではありません・・・私は・・・貴女を愛しています。誰よりも、心から・・・」 そう言って彼女の手の甲にキスをした。 「私は・・・貴女だけを愛しています・・・貴女だけを・・・永遠に・・・」 だが・・・私はお前を愛することは出来ないだろう・・・ 「・・・そうか・・・」 彼女は彼の頬をなでると、ゆっくりと立ち上がりモニターに目を向ける。 「どうやら客が来たようだな・・・」 そのまま扉の方を向き、歩き出そうとした・・・が、その腕を彼につかまれた。 「Dr.どうか、私のワガママを聞いていただけませんか?」 彼は真剣に彼女を見つめ、そう志願してきた。彼女は少し考えて。 「何だ? 言ってみろ・・・」 「・・・どうか、私をゼロと戦わせて頂けませんか?」 「・・・何故だ?・・・その理由を言え」 すると彼は彼女から目をそらし、何も言わなくなってしまった。 「・・・言いたくない・・・か?」 彼は何も言わない。 「・・・ふぅ・・・まあ、いいだろう・・・行け、お前の好きにすれば良い・・・」 一つ小さなため息をすると、彼女は静かに微笑みそう言って。そして・・・ 「死ぬんじゃないぞ・・・」 それだけ言うと、彼女は扉の向こうに消えて行く・・・その彼女の背中を見つめながら、彼は一礼をした。 「有難うございます、Dr.・・・」
・・・どうか、私のワガママをお許しください・・・
半月前
〜破壊されたビルの中〜 「ヴィシュヌ、少し話がある。良いか?」 「なに?」 「Dr.の事なのだが・・・」 「わかってる・・・母さん・・・死のうとしてるよね・・・」 「・・・やはりそうか・・・」 「ねぇ・・・このままじゃ母さん・・・本当に・・・」 「・・・私は、あの方に死んでほしくない」 「そんなの!・・・俺だってそうだよ・・・母さんにはずっと生きててほしい・・・」 「・・・・・・一つ提案があるのだが・・・聞いてくれるか?」 「・・・いいよ」 「・・・これは・・・あの方の意に背く事なのだが・・・私は、あの方の盾になろうと思う・・・」 「盾?」 「そうだ、今までこれだけ派手に破壊活動をしてきたんだ。あの組織の刺客に命を狙われる事は必至だ。それどころか・・・イレギュラーとしてハンターどもにも追われるだろう・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 「そんなあの方を、私は守りたい・・・私は・・・」 「じゃあ、俺も盾になる。一人より、二人のほうが丈夫な盾になるでしょ?」 「・・・良いのか?」 「母さんがいなくなっちゃったら、俺の存在意義なんてないからね・・・」 「・・・そうか・・・」 「螺旋・・・最初は、俺が盾になるから。君は母さんのそばにいて・・・」 「! お前・・・」 「俺が壊れるまで・・・ね? 約束だよ・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 「あと、この事は母さんには内緒だね」 「そうだな、あの方がこの事を知れば私達を封印してでも止めそうだからな・・・」 「約束」 「あの方を守ろう・・・私達の体が動かなくなるまで・・・」 「守ろう・・・母さんを・・・俺達の愛する人を・・・」
・・・最初で最後の・・・ワガママをお許し下さい・・・ |
||