Color Oils
暗い・・・ここはいったい・・・ エックスは螺旋に言われたとうりに廊下をまっすぐに走って来た。そしてその突き当たりにあるドアを開け、中に入った・・・中はヴィシュヌと戦った部屋のように真っ暗で、辺りは何も見えない状態だ。 ゆっくりと部屋の中心に向かって歩き出す。するとだんだんと照明が付き始め、ここがどういう部屋なのかわかってきた。 これは・・・研究室? しかも・・・何だ? ガラス越しに見える向こうがわ・・・手術台みたいなのが見えるけど・・・ 「・・・来たか・・・」 不意に声がして、エックスは慌てて体勢を整えた。そこには・・・あの廃墟と化したビルで出会った女性が静かに立っていた。彼女はあの時と同じゴーグルをつけていはたが、白衣は着ていなかった。その姿は今まで見たどのレプリロイドともまったく違う格好をしていた・・・アーマーをほとんどつけていないのだ。つけているのはアームパーツとフットパーツだけ・・・初めて会った時には気付かなかったが、フットパーツもレプリロイドとは違う形をしている。まるで中世の騎士の鎧のパーツの様だ・・・ そのとき、エックスはある事に気がついた。 どうして・・・攻撃してこなかったんだ? 先ほどのタイミングなら、彼女は彼を倒す事が出来ただろう・・・だが、彼女は待っていたとでも言うかのように彼を迎えた・・・そして・・・ 「もう私のすべき事は終わった。さあ、イレギュラーハンターエックスよ、イレギュラーである私を処分しろ」 そう言って両の手を大きく広げた・・・ エックスはギョッとした。今までのイレギュラーは完璧に狂っていて有無を言わさず襲ってくるか、思考が正常であっても、必ず処分されまいと抵抗してきた・・・だが、彼女は違った・・・ そんな・・・まさか・・・ 「どうした? 何をためらっている・・・」 彼女はじっとエックスを見ている。ゴーグルをつけているのでその表情を読み取る事は出来ないが・・・ 死のうとしている・・・のか? そう思ったとき彼は彼女が撃てなくなった。彼女は何らかの理由で今まで破壊を繰り返した、その罪は償わなければならないと思う・・・だが・・・ 「出来ません!! どうしてそんな事を言うのですか!? たしかに、破壊を繰りかえし貴女はイレギュラーに認定された、だけど!! 貴女の罪は償えばきっと許されるはずです! 貴女は・・・イレギュラーなんかじゃない!!」 エックスは叫んだ、思っていた事を全てぶちまけた・・・彼女はイレギュラーなんかじゃない・・・その思いがさらに強くなっていく・・・ だが、そんな彼の叫びを聞いた彼女は静かにこう言った。 「私はイレギュラー(異常)だよ・・・」 そして彼に銃口を向け。 「私を処分できないと言ったな、なら出来るようにしてやろう・・・!!」 言うなり、彼女は一瞬にして彼の後ろに回りこんだ。 ドウッ!! エックスには何が起きたのか理解できなかった・・・だが、すぐに己の左肩に激しい痛みが走り・・・・ 「うわぁぁぁ!!」 左肩がら激しくオイルが流れ出す、ちょうど、アーマーの構造上最ももろい部分を至近距離で撃たれたのだ。彼は何とか痛みをこらえて、バスターをかまえる・・・だが・・・彼女の動きを捕える事が出来なかった。 そんな! 俺のセンサーでも捕える事が出来ない!? 実際、彼女のスピードはまさに目にも止まらぬと言う早さだった。いくら予測を立てて撃っても外れてばかりだった。それとは対照的に、彼女が撃った銃弾は確実に彼の体力を奪っていく。 くそっ、このままじゃ・・・ ドウッ!! 今度は左斜め後方からの銃声。彼はすんでの所で体をひねりそれを避けた・・・はずだった・・・ 「ぐ・・・あぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!!!!」 たしかに銃声は一つだけだった・・・はずなのに・・・あるはずの無い銃弾が彼の右足を貫通した。 なにっ!? 一体何が!?
壁や床についた銃弾の跡から、『数発撃っていた』という事が解ったが・・・相変わらず彼女の姿はつかめない、それどころか、足を撃たれ機能が低下してしまっている様だ・・・なんとか物陰に身を隠す。 くそっ・・・ダッシュが出来なくなってる・・・・しかし・・・なんて腕前だ・・・撃つ早さが尋常じゃない。銃声が一つしか聞こえなかったのに何発も撃ってたなんて・・・でも、まだ一発も致命傷にはなっていない・・・ たしかに彼女の攻撃はエックスにあたっていた。だが、全て急所をはずされているのだ。そう、彼女はわざと急所をはずし、彼がバスターを撃つように仕向けているのだ・・・ ・・・・・・・どうして・・・・・・・・ エックスは物陰から飛び出した、策があるわけでもない・・・だが・・・じっとしていられなかった。彼の突然の行動に、一瞬彼女はたじろいだ。その隙をつき、エックスは彼女に体当たりをして押し倒す。彼女の上に馬乗りになる状態で、バスターをかまえた・・・ 「教えてください・・・」 今にも消え入りそうな声で彼は聞く。 「どうして・・・どうして貴女は死のうとしているのですか?・・・どうして・・・」 今にも泣き出しそうな顔で彼はどうしてと問い続けた・・・ 「・・・そうか・・・・・・お前は・・・・・・・・優しすぎるのだな・・・」 そんな彼の頬を彼女は優しくなでる・・・まるで母親が子供をあやす様に優しく・・・ 「・・・教えてやろう・・・私が死にたがっている訳を・・・だからどいてくれないか?」 とても優しい声色に、エックスは一瞬聞きほれた。だが、どいてくれと言う事場ですぐ我にかえる。 「え、あ、あ! すみませんでした!!」 そんな彼のしぐさに彼女は微笑み、優しく彼を抱きしめた・・・ 「お前は本当に優しい子なんだな・・・すまなかった・・・痛かっただろう?・・・」
まるで聖母に抱かれている様だ・・・
先ほどまであれほど激しい攻撃を仕掛けてきた者と同一人物とは思えないくらい優しく・・・彼女は彼の事を抱きしめていた・・・ 「そうだな・・・何処から話せば良いか・・・」 そのとき、不穏な影が近づいている事に、二人はまだ気付いていなかった・・・ |
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