Color Oils

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 彼女はゆっくりと話し始めた・・・エックスはいつのまにか幼子のような喋り方になっていたが彼自身、気付いていなかったのかもしれない・・・不思議と違和感は感じられなかった。

 

 

 どうして、今までビルとか壊してたの?

 

 別にビルを破壊する事が目的だったわけではない、そこにある機密データを破壊したら連鎖的に爆発してしまっただけだ。私はただデータを壊したかったんだが・・・

 だから今まで人も、レプリロイドも、メカニロイドも殺さなかったんだね?

 ああ、無意味な殺戮をしても仕方がない、人の記憶は完全なものではないし、レプリロイドやメカニロイドの記憶データもある場所を攻撃すればすぐデリートされるしな。

 あのね、じゃあ、はじめて会った時にどうして俺を攻撃しなかったの? どうしてあのレプリロイドを攻撃したの? どうして、あのレプリロイドの気配を感じられなかったの?

 

 あの時か・・・あのとき私はある計画に携わる企業を全て、破壊したと思っていたのだ。だからもう、自分のすべき事は終わったと・・・だが、まだ活動している組織があった、それがあの時出現したレプリを送りこんできた所だ。

 お前が気付かなかったのも無理はない。あのレプリは戦闘重視に作られていてな、気配はもちろん、足音も消せ、レーダーにも引っかからないと言う存在だ。たしか・・・最新型とか言っていたな。

 ・・・私は・・・お前に処分されるつもりだった。だが、まだそのレプリを送りこんできた組織が残っているとわかってな。奴の記憶データをデリートし、その企業の場所に向かったわけだ。

 じゃあ、最後に・・・あの、あのね・・・どうして・・・死のうとしているの・・・・・?

 それはな・・・・・・・・・私が・・・生きていてはいけない存在だからだ・・・・私はあるプログラムのせいで自ら死ぬ事はかなわん・・・だから・・・・・・・・・

 

 

 

 ・・・・その時何が起こったのか解らなかった・・・急に彼女が俺を突き飛ばして、それで・・・次の瞬間暖かい液体が俺に・・・俺はそれを手で拭った・・・それは赤黒い色をしていて・・・嫌な予感がして彼女の方を見た・・・

 エックスは動けない・・・目の前で起こった事を理解したくなかった。自分を突き飛ばした彼女の身に起こった事を夢だ、幻だ・・・と・・・思いこみたかったのだが・・・

 彼の前に立つ彼女の体からは大量の赤い液体が流れ出し、その足元にはすでにその液体が溜まっていた。だが、彼女は正面を見据え彼女の体をこん状態にした者に近づこうとする。

 彼女は知っていた。今攻撃したものが何者かを、その存在が自分を嫌っている事も。だから彼女はエックスから離れたエックスに攻撃が及ばぬよう、自分への攻撃で、エックスが傷つかぬよう・・・

 ・・・・・・エックスは・・・動けなかった・・・・・

「ウフフフ。流石よねぇ、お腹に穴が開いたまま動けるなんて、やっぱり一度死にかけた人間は違うわねぇ・・・ねぇ、サンプルNo.U−MA(ユーエムエイ)」

 彼女をユーエムエイと呼んだのは、何処かの研究所にいそうな、白衣を着た女性だった。彼女はさも滑稽な物を見る様に薄笑いを浮かべていた・・・

「アンジュ・・・・ッハァ・・貴様・・ッ・・何故・・・・・・ここに・・・」

 アンジュと呼ばれた女性は汚らわしいとでも言うかのように顔をしかめ。

「あんたなんかが、私の事を呼び捨てしていいと思っているの? しかも貴様ですって? まったく、失礼しちゃうわ、出来損ないのくせに・・・」

「フ・・・ン・・・お前の・・・ハッ・・呼び方など・・・・・貴様で・・・・充分だ・・ハァ・・・・ハッ・・・せっかく助かった命を・・・クッ・・・・無駄に・・・しに来たのか?・・・」

 彼女は息を切らしながらもアンジュに近づいていく・・・その足元には赤い液体の帯が出来ていた。

「別に私は死なないわよ、ただ・・・この私に苦汁を飲ませたあんたの苦しむ顔を見てやろうと思ってねぇ。ウフフ♪ あんた、自分がなんのために作られたか知ってる?」

 その質問に、彼女が少しだけ反応を示した。

「そういえばあんた、その体になる前の記憶が戻って今まで暴れてたみたいだけど・・・」

 彼女の足が止まった・・・

「あんたはねぇ、ある方のエネルギー補給のためのいわばデ・ン・チみたいな物なのよぉ」

「・・・・・・」

「用が終わればすぐにスクラップ、他のゴミと一緒に捨ててあげたのに・・・余計なことして私達の計画を邪魔するなんて・・・あなた、よっぱどお馬鹿さんなのね」

 そんな挑発めいた事を言われたにもかかわらず、彼女は落ち着いた様子でこういった。

「そうか・・・やはりな・・・」

「・・・何ですって?」

「気付かないとでも思っていたのか? 貴様等が私に与えたこの頭脳、存分に使わさせてもらっているんだ。そのくらい調べればすぐにわかる・・・」

「なっ!」

「貴様等のMCP(マザーコンピュータ)に潜入したのさ。その時にこの下らん計画に関係している企業を調べ上げてな、後は知っての通り、そのビルのMCPさえ壊せば、後はビルが勝手に爆破をはじめると言うわけだ」

 彼女は腹部の傷をいつのまにか修理し終えて、何事もなかったかのように話をしている・・・

「やっぱり・・・気に入らないわ・・・あんたなんかを採用した事が間違いだった・・・」

 一触即発といった雰囲気だった、何もかもが気に入らないというアンジュの態度。そして、傷も完全に治り堂々とした態度でアンジュを見据える彼女・・・

「気付くのが遅すぎたな・・・もとより、私はこの体になる事を望んではいなかった・・・貴様等が勝手にしたんだろう?・・・だから、私も勝手にさせてもらった」

 そう言い放つ彼女を、憎しみを込めた瞳で睨みつけるアンジュ・・・だが、急にその口元を緩ませ・・・

「フフッ・・・・まぁいいわ・・・この苛立ちも、もう感じなくてすむんだもの・・・今日限りでね・・・」

 そう言いながら部屋のさらに奥のほうへと歩き出す。

「あんたがここを選んでくれて良かったわぁ〜・・・あの方が眠るこの場所で・・・あの方をすぐ目覚めさせる事が出来るんだもの、この事は感謝しなくちゃね」

 そして丁度ガラス越しに手術台の見える部屋の扉の前に立ち止まった。

「さぁ、お目覚め下さい・・・今、朝食をご用意いたしますわ・・・」

 そう言ってアンジュはリモコンのようなものを操作した・・・次の瞬間!

「ぐ!? っああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 彼女の体を激しい電撃が走る!その電流は彼女を包み込み、大きな球体のバリアになった。



 エックスは一部始終を見ていた。いや、見ていることしか出来なかった・・・はじめ、彼女に突き飛ばされた時、彼女はエックスにあるプログラムを流し込んでいた・・・それはほんの数分の間だけ、体が動かなくなると言うものだ・・・

 彼女はエックスを傷付けたくなかった・・・自分が傷つく事も恐れず、彼女を救おうとした心優しいエックスを、彼女はこの、自分勝手な戦いにに巻き込みたくなかったのだ。

 はじめは自分で死ぬ事が出来ないのなら、イレギュラーハンターに殺してもらおうと思っていたが・・・この、優しく幼い存在にそのような事をさせるのは酷だと感じはじめていたのだ・・・

 

 「ウフフフフ・・・・もうすぐよ・・・もうすぐ、あの方がお目覚めになるわ!!!」

 

 アンジュがそう叫んだとき、勢いよく扉が開いた・・・







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