First Contact

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 ある晴れた午後、一人の少年がのんびりと街を歩いていた。

 少年の名はハルト=ルヒエル。普段はイレギュラーハンターとして各地を飛び回っている彼だが、今日は非番で休日を楽しんでいるようす。

「ん〜・・・・いい天気だなぁ」

 彼は軽く伸びをする。アーマーを着用せず私服でいるのは久しぶりのことで、文字どおり『体が軽い』のだ。

「さて、次はどこに・・・」

 ドゴォォォン!!!!!

 急に爆発が起こり地面がゆれ、街が悲鳴に包まれる!

「な、何だぁ!?」

 人々が逃げ出す中、少年は爆発の起こった場所へと向かって走りだした。

「ッたく、非番日くらいゆっくりさせろよな!!」

 

 

「ヒドイ・・・」

 同じ街の同じ時間、一人の少女は爆発の起こった現場のすぐ近くにいた。

 少女の名はマリア。いつもは大好きな兄達と共に行動しているが、その日に限って兄達は揃って仕事・・・仕方がないので一人でウィンドウショッピングを楽しんでいたのだ・・・だが・・・

 突然暴走をはじめたのは業務用レプリロイド。イレギュラーとなってしまったそのレプリロイドは、持っていたバーナーで近くにいた人間の少女を攻撃しようとした。

「!?やめなさい!!」

 マリアは走り出した。己がアーマーを装備していない事も忘れ、イレギュラーに攻撃を仕掛ける。

「フッ!!」

 瞬時にイレギュラーのそばまで移動し、後頭部に蹴りを入れる。前のめりに倒れるイレギュラーを飛び越え、少女を抱えて走りだそうとするが・・・

「きゃ!!」

 足を捕まれ倒れこむ。抱えた少女が怪我をしないように横向きに倒れたため、腕の感覚が微妙におかしくなってしまった。

 マリアはとっさに、ポーチの中に入れていたバリアシステムを少女に持たせ電源をONにした。

「それを持ってれば安全だから!ちょっと怖いかもしれないけど我慢してね・・・ごめんね・・・」

 そして彼女はイレギュラーに向き直り、戦闘体勢に入る・・・

「いくよ!!」

 

 

 避難する人間達とは逆に走っているため、思ったより現場に着くのが遅くなってしまったハルトが見たもの・・・それは己の目を疑う光景だった。

 おいおい・・・マジかよ・・・

 イレギュラーと戦っているのは、まず間違いなく自分よりも年下であろう少女。しかもその少女はアーマーも着用せず、スカートのまま戦っているうえ、その少女の後方には人間と思われるさらに小さな少女がバリアの中で怯えていた。

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 少女は素早い動きでイレギュラーに攻撃をしているが、ウェイトの軽さからか致命的なダメージを与えられないで入るようだ。

 援護のチャンスをうかがっているとき、ハルトはある事に気がついた。

 ・・・あの動き・・・どこかで・・・・・・

 少女の動きには誰かを思い起こさせる動きがいくつか入っていた。

 っと、んな事考えてる場合じゃないな・・・

 まずはなんとか人間の少女を助けようと走り出す・・・だが破壊されたビルのガス管が引火したらしくすぐそばのビルが爆発した。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 戦っていた少女が吹き飛ばされ、バリアに守られた少女も驚いてシステムを手放してしまった。

 まずい!!

 バリアの消えた少女をイレギュラーが狙う。それに気付いて吹き飛ばされた少女が素早く小さな少女に覆い被さりその身を盾にして守ろうとしていた・・・

 

 

 爆風に吹き飛ばされ背中を強く打ったマリアは一瞬気が遠くなるのを感じたが、なんとか持ち堪える事が出来た・・・だが・・・

 いけない!!

 そんな彼女の目に飛び込んだのは、今にも攻撃されそうな小さな少女の姿・・・マリアは走った。その身を盾に少女を守ろうと覆い被さった・・・そして、続いてくるであろう衝撃に目をつぶる・・・・

 ガキィィィン!!!

 金属のぶつかる音・・・

 ・・・ああ・・・ぼく、死んじゃうのかな・・・?

 そんな事を考えたがいつまでたっても意識が遠のくどころか痛みさえもまったく感じない。不思議に思いゆっくりと顔を上げ振り向くと・・・

「せっかくの非番日を台無しにしてくれたんだ、覚悟しろよっ!!」

 ドガァ!!

 一人の少年が自分にくるはずだった攻撃を受けとめ、さらにイレギュラーを殴り飛ばしてしまった。

「ん?あ、大丈夫?立てそう?」

 少年は優しくマリアに声をかけ、手を貸す。マリアはその手を取り立ちあがる。

「あいつは俺に任せて、その子を早く安全な所に!」

 少年の言葉にハッと我に帰り、マリアは少女を抱きかかえ走り出した。それを見て、少年はイレギュラーへと向き直り・・・

「さてと、さっさと終わらせるぜ!かかって来いよ!!」

 

 

 ハルトとマリアの活躍により、今回の事件は負傷者もなく解決した。だが・・・

「マリア!!・・・お前・・・その格好・・・・」

 ベースに帰還した二人に・・・正確に言えばマリアにゼロが駆け寄ってそのボロボロな姿に驚いていた。

「エヘへ・・・アーマー転送するの忘れちゃってて・・・」

 恥ずかしそうに言うマリアにたいし、ゼロはもう兄ばかならぬ親ばかっぷりを多いに発揮する。挙句の果てには、もうすでにハルトが倒してしまったイレギュラーを跡形も無く消し去ってやるなどという物騒な事まで言い出すしまつ・・・

 その光景を見ていたハルトは、ゼロの意外な一面に驚きながらも妙な納得を得ていた。

 ・・・この子が噂のゼロ先輩とエックス先輩の・・・そうか、だからあの時・・・・

 その納得は彼女が戦っていた時に見たあの動き・・・彼女の動きにはゼロの豪快さとエックスのしなやかさが備わっていたのだ。

「お疲れ、ハルト」

 急に後ろから声をかけられ、驚いて振り向く。そこには・・・

「あ、エックス先輩!!」

 彼に声をかけたのは憧れの存在でもあり、少女の兄でもあるエックスだった。

「君もアーマー無しで戦ったのかい?・・・まったく、無茶するんだから・・・」

 そう言って苦笑するエックス、ハルトはなんだか恥かしくなり、顔が赤くなる。

「そ!それは・・・今日俺非番でしたし・・・」

 ワタワタと説明し始めるハルトを見て、エックスは微笑んだ。なんだか仲の良い兄妹が固まっているような光景がそこに・・・

「そ、それじゃ俺、総監に今回の報告してくるっス!!」

 ハルトはそう言って走り去ってしまった・・・よっぽど恥かしかったのだろう。

「なんだあいつ?」

 ゼロが呆れたように言う。

「ちょっとからかいすぎたかな?」

 そうは言いながらもエックスの顔はほころんだままだ。

「あ、ぼくも報告に行かなきゃ!」

 名残惜しそうにマリアに抱きついているゼロの髪をエックスが引っ張り彼女を解放する。

「じゃあ、ちょっと行ってくるね♪」

 そしてマリアも司令室へと向かって走って行った。

「まりあ〜・・・」

「もう、情けない声出さないでよ・・・」

 

 

 

 

 自室に戻ったハルトは、そのままベッドに倒れこんだ。

「・・・はぁ、結局ちゃんと休めなかった・・・」

 司令室に報告に行ったあと、書類を沢山書かされもうくたくただ。このまま寝てしまおうかと考えていた所に、誰かがインターホンを押した。

『ハルト、いるかい?』

 エックスだ、ハルトは急いでドアを開ける。

「せ、先輩!急にどうしたんっスか!?」

 突然の訪問にハルトも驚いたが・・・勢い良くドアを開けられ、丁度ドアをノックしようとしていたエックスはその形のまま固まっていた。

「あ・・・びっくりしたぁ・・・」

 何ともあっけらかんと言うエックスに、何か事件でも?と思っていたハルトは拍子抜けする。

「・・・・あ・・・・あがります?」

 とりあえず聞いてみる。

「いや、用事があるのは俺じゃないんだ・・・ほら、おいで」

 エックスの後ろから出てきたのは昼間、共に戦った少女・・・マリアだ。

「あの、今日は危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございました!」

 元気良くお辞儀をする彼女にハルトは苦笑する・・・しかし・・・この可愛らしい少女がスカートのまま勇敢にイレギュラーと戦っていたあの少女と同じとは・・・実際見ないと到底思えないだろう。

「そうそう、この子はお前と同じ部隊に所属することが決まっているんだ。この子の事、よろしく頼むよ♪」

 ・・・今・・・さわやかに物凄いことを頼まれたような気がする・・・

 あのゼロの行動からしてこの子がどれほど可愛がられているか容易に想像がつく・・・だが他に断る理由も見つからない。何より憧れの先輩が自分を信頼して大事な妹を任せると言ってくれたのだ。

「は、はい!まかせてください!!」

 どん!と自分の胸を叩き、咳込むハルト。その様子に苦笑しながらもエックスは喜びを隠せないでいた。

「ハルトさん!ぼく、まだ生まれたばっかりでわからない事いっぱいあるけど・・・よろしくお願いします!!」

 またまた元気いっぱいのお辞儀。

 戦っているときよりも、こうやって笑顔でいるほうがらしくて良いのに・・・

 そう考えて自然に顔がほころぶ。ふと彼女が自分にたいして敬語を使っている事が気になった。

「あのさ。俺と話すとき、別に敬語使わなくて良いよ?それに「さん」も付けなくて良い。呼び方は君の好きなように呼んでくれたら良いから♪」

 少し前かがみになり、そう言う。彼女との身長差は約20cm強・・・大人と子供ほどの差があるのだ。

「・・・ほんとに・・・いいの?」

 おずおずと聞き返すマリアに・・・

「もちろん!」

 笑顔でそう答えるハルト。

「やったぁ♪ぼく敬語使うの苦手なんだ、だからそう言ってもらえると凄く嬉しい♪えっと・・・じゃあ、ハルト君ってこれから呼んでもいい?」

「ああ、いいよ♪」

 大きな瞳をキラキラと輝かせ本当に嬉しそうなマリアを見ていると、ハルトまでなんだか嬉しくなってきた。エックスもそんな二人を見て微笑んでいる。

「これからよろしくね、ハルト君♪」

「ああ、こちらこそよろしく。マリアちゃん♪」

 これが二人の出会い、これが・・・運命が動き出した瞬間・・・

 

 FIN







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