THE HAPPENINGS OF A CERTAIN DAY



「アプサラス、これは何処に置いたらいいんですか?」

 とある診療所、その中で、赤い髪の男性が少女のような女性へ問い掛ける。その男性の名はアポロ。

「それはそっちの棚のほうに種類ごとに分けておいて」

 アプサラスと呼ばれた女性はデスクに向かい自らの仕事をしながら、アポロに指示を述べた。

「わかりました・・・こっちのも?」

「うん、そう・・・・ってドラちゃん!!」

 書類に目を通しつつ、チラッと横目で確認する。その時、もう一人の男性が椅子に腰かけ煙草を吹かしているのを発見した。

「なんや・・・うるさいなぁ・・・・」

 独特の訛りを含んだ喋り方の、この男性の名はインドラ。

「うるさいなぁ・・・じゃなくて!ちゃんと手伝ってよ!!」

 バン!!っとデスクを叩き声を荒げる。

 実は彼女、ここ数日の間ロクに睡眠をとる事ができずイライラしているのだ。まぁ、その手伝いにアポロとインドラが借り出されているわけなのだが・・・

 その原因というのが、最近頻繁に起こるようになったレプリロイドのイレギュラー化・・・

「あーもう!!一体なんなのよ!」

 少し前まで、このあたりでイレギュラーが発生したと言う話しは全く聞かなかった。

 だが、ここ数週間のうちにイレギュラー発生率が大幅に上がり、その分この診療所に運ばれてくる患者の数も増えていた。

 今現在は患者の治療も終え、書類の書き込みや医療品の整頓とった仕事をする程度で済んでいるのだが、またいつ急患が運ばれてくるか解らない。

「ま、こればっかりはイレギュラー化の仕組みがわからへんと、どーしょうも無いしな・・・」

 インドラが半ば諦めた様な口調で言い放つ。その言葉には悲しみの感情も含まれていた・・・

 

 ぴ〜んぽ〜ん♪

 

 部屋全体に重苦しい空気が流れていたその時、急に場違いなインターホンのチャイムが鳴り響いた。

「・・・相変わらず緊張感のない音やの・・・」

「最初はネコの鳴き声にしようかと思ってたんだけど・・・」

 特に気にしたふうもなくそう言ったアプサラスの言葉に、男二人はひきつった。

 診療所のインターホンのチャイムの音がネコの鳴き声・・・それはそれでなんだか怖い・・・

「頼むからそれだけはやらんとき・・・・・」

 ガクっと頭をたれ、顔に手を当ててそう言ったインドラの言葉に、アプサラスは少し残念そうな表情を見せた。

 そんなにネコの鳴き声を付けたいのか・・・

「あ・・・あの・・・患者さんかお客さんが来たのでは・・・?」

 何故この話しが始まったのか、少し考えチャイムが鳴ったことを思い出したアポロがそう、控えめに告げる。

「「あ・・・」」

 その言葉に、ようやく来訪者がきていることに気が付いたアプサラスとインドラ。

「じゃ、ドラちゃん♪」

 ニッコリと、インドラに俗に言う天使の微笑みを向けたアプサラスに、彼が逆らえるはずもなく・・・

「・・・へいへい、わいが出ればよろしいんでっしゃろ・・・」

 と、ため息混じりに玄関へ向かっていった。

 

 

「どちらさんですか〜?」

 ドアを開け、来訪者を見た彼の第一声。

げっ

「ちょっと、『げっ』って何よ『げっ』って・・・失礼ね」

 ドアの前にいたのはハーピィ型レプリロイド。名前はミスティル。

「あ・・いや・・・今日はどないしたん?」

 実はインドラ、彼女にほんの少しだが、苦手意識を持っていた。嫌いなタイプではないのだが、アプサラスと同じようにどうしても頭が上がらないのだ。いつもいいように使われているような気がしてならない。

「アプに手伝って欲しいって言われたのよ、だからお手伝いにね♪」

「あ〜・・・ほな後はよろしゅ・・・ぐえっ!?

「何言ってるのよ。あなたも手伝いに来てるんでしょ?」

 とりあえずその場から逃げ出してしまおうとする彼の首根っこを素早く掴んだミスティルは、そのままずるずると引きずりながら中へ入っていった。

 

「あ〜!!みーちゃん!!」

「はぁい、アプ。手伝いに来たわよ♪」

 きゃ〜Vvと喜びながら抱き合う二人に、アポロが恐る恐る話し掛ける。

「あ・・・あの・・・」

「ん?どうしたの?」

「・・インドラ・・・首・・・」

 絞まってる・・・と青い顔で言われ、ミスティルはインドラを引きずってきていた事を思い出した。

「あら?ごめんなさい。忘れてたわ」

 ようやく離して貰えたインドラは、盛大に咳き込んだ。

げっほげほげほっ!!

「んもう、ドラちゃんったら情け無いわねぇ〜」

 からかい半分に、笑いながら言うアプサラスに恨めしそうな視線を向け、何とか呼吸を整える。

 前に行こうとして急に後ろに引っ張られたものだから、喉にかかる負荷は普通に考えても2倍以上。実は結構なダメージを受けていたりする。

「だ・・・大丈夫ですか?」

「あぽろぉ〜」

 アポロは床に座ったままでいるインドラの隣にしゃがみこみ、心配そうに背中をさする。

「わいの味方はお前だけや〜!!」

 

 がばっ!! さっ! びたん!!

 

 勢いよくアポロに抱きつこうとしたインドラだったが、素早く避けられてしまった為、そのままの勢いで床とご対面。

「・・・・・・・なして避けるん?・・・・」

「あ・・・えと・・・なんとな・・・く?」

 突っ伏したままの問いかけに・・・おそらく条件反射で引いてしまったのだろう。自分でもわかっていないようで、首をかしげながら返事を返す。

「・・・酷いわぁ〜・・・・・」

 よよよと泣き真似をし始めるインドラに、アポロは素で騙され・・・反射で避けてしまったとはいえ申し訳ないことをした・・・と謝ろうとした時、

「あそうそう、みーちゃん、『この子』がアッ君♪」

 と今度はアポロがアプサラスに首根っこを掴まれた。

「・・・こ・・・この子?」

 襟首を掴まれた事よりも、言われた言葉に衝撃を受けるアポロ。いくら自分が起動してからそれほど月日がたっていないとはいえ、見た目的に自分よりも年下に見える彼女に『この子』と呼ばれるのはかなり抵抗を受ける。

「この子が例の・・・」

 例のって何ですか?と、とても不安ですと顔にありありと出ているアポロにミスティルは微笑みかけると、

「初めまして、私はミスティル=クラウス。貴方の事はアプから聞いているわ」

 出された手(?)を握り返し握手をする。

「こちらこそ、初めまして・・・あの・・アプサラスから聞いてるって、一体なにを・・・?」

 その言葉に、アプサラスとミスティルは顔を見合わせ・・・

「それはもう、色々と」

「そう、色々と・・・ねぇ」

 ニヤリ。と笑いあう二人に、冷や汗をたらし怯えるアポロ。いったい二人で何を話しているんですか!と聞き出したいが、この様子では聞き出したほうが怖い結果になりそうで・・・

「お二人さん・・・あんまりアポロをからかって遊ばんといてください」

 アポロの怯えように見かねたインドラが助け舟を出す。

「まだそんな周りの事わかっとるんとちゃうんやから・・・」

「いんどらぁ〜」

 半泣き状態でインドラの助けに心底安堵するアポロの頭を、彼はくしゃくしゃっと撫でた。

「お前なぁ、いくらできたてでも男なんやさかい。そないな顔すんなや・・・」

 そんな二人の様子を見ていた女性2人は・・・

「あらあら、仲良しさんねぇ〜」

「ほんとね〜」

 と、くすくす笑っている。そんな彼女たちの様子に、背筋に冷たいものを感じたインドラは、

「・・・なんやよからぬ事考えられとるような気ぃするんは・・・わいだけやろか・・・」

 と、深いため息をついた。

 

 

 それから4人は残っていた仕事や、診察を受けにきた患者の対応など。それぞれ休む間もなく働いていた・・・

「・・・なんかわい一人こき使われとるような気ぃするんやけど・・・」

「そうですか?」

 アポロを肩車しつつ、呟いたぼやきにアポロが返事をする。

 ちなみに、どうして二人がそのようなことをしているのかと言うと・・・かなり高い場所にある棚の上へ、普段はあまり使わない道具等を整頓してしまっているから・・・身長の低い彼女の診療所に何故こんなものがあるのかは謎ではある・・・・

「そんなことはないと思いますが・・・よしっ、ありがとうございます。もういいですよ」

 ゆっくりとアポロをおろし、一息つこうとした・・・ちょうどそのとき、

「ドラちゃーん!次こっち手伝ってー!!」

「あ、その次はこっちもお願いします」

 と、再び声をかけられる。

「ってお前ら!!何でわいばっかりに言うんや!?」

 流石に、何度も何度も自分ばかり呼び出されているこの現状でこき使われていないと思うほうが不自然で、つい叫んでしまう。

「え〜?だってぇ。ドラちゃんのほうが1年早く起きてるし、アッ君より経験豊富でしょ?」

「それに、インドラさんの方が力とか強いでしょう?」

 女性二人に口々に言われ、

「そりゃまぁ・・・そうやけど・・・」

 と勢いを失ってしまう。

「あ・・・・あの、私も出来る限りお手伝いしますから・・・・」

 隣にいたアポロが申し訳なさそうにそう言ってくるのを見て・・・

「あ〜・・・もう!!手伝えばいいんやろ手伝えば!!」

 どうもアポロの困ったような顔には弱いらしく、あんな顔をされると、愚痴ったことさえとても悪いことのように思えてくる。

「じゃ、まずはこっちのお手伝いよろしくね〜♪頼りにしてるわよんVv」

 へぇぃと、まるで気のない返事をして、インドラは彼女の元へと歩いていった。

「あ・・・私は何をすれば?」

 部屋の中へ引っ込みそうになったアプサラスに尋ねると、

「アポロさん、私の方手伝ってくれます?」

 と、ミスティルに呼ばれ、頷いて彼女のいる部屋へと向かう。途中、アプサラスに呼び止められ・・・

「さっき言いそびれちゃったけど、別にアッ君の事頼りにしてないわけじゃないわよ?」

 少し不安に思っていた事を言われどきりとする。

「アッ君はまだ起動したてでしょ?いきなり色んな事をするとオーバーヒートしちゃうから・・・今はまだゆっくり覚えていってね♪」

 もちろん、いずれバシバシ働いてもらうから♪

 最後に言われた言葉は笑ってごまかし聞かなかった事にして、今度こそミスティルの手伝いの為に彼女のいる部屋へと向かう。

 彼女がいる部屋には多くの負傷者が治療を待っていた。ついさっき運ばれてきたレプリロイド達だ。

 どうやらこの近くで発生したイレギュラーとの戦闘で負傷したらしい。

 

 彼らの応急手当を終えると、アポロは一人、する事が無くなってしまった。

 多少は治療の知識があるとはいえ、それは応急手当程度のもの。あまりに大きな怪我をした患者は、彼女達に任せるしかない・・・

「そういえば・・・皆ご飯まだでしたね・・・」

 この診療所は病院のように診察時間が決まっておらず、たとえ昼食時であろうが真夜であろうが急患がやってくればすぐさま対応する。

 おかげで食事も1日取れないこともある・・・と、前にアプアサラスが苦笑しながら言っていたことを思い出し、彼はキッチンへと足を向けた。

 今までも何度か彼女の為に食事を作った事があったので、キッチンにあるものは何を使っても良いといわれてあるのだ。

 

 

To Be Continued



中書き

ゾロ目キリ番、7777を踏まれた橋本様からのリクエスト小説でございます!

『橋本様のキャラと、私のキャラのお話』との事でしたのでこうなりました(^^;

アプサラスとミスティルさんのコンビは最強(最凶)です(爆)





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