かくれんぼ
その場所は自然こそ多いものの深い谷に囲まれ、今まで人の出入りの出来る場所ではなかった・・・そう、飛行能力を持ったもの以外、この谷に下りるのは不可能なのだ。
「そうよ、そのまままっすぐ・・・もう少し進めば何か遺跡のような物があるはずよ、そこまで進んで頂戴」 「了解しました・・・」 通信機からエイリアさんの声が聞こえる、ぼくは彼女のナビに従い、しばらくまっすぐ飛びつづけた。そしたら、今までごつごつの大きな岩(上から見たら、谷の中を進んでいる状態になるのかな?)ばかりだった場所から急に拓けた場所に出た・・・
5時間前 「無茶です!! そんな事!!」 バンッ!! そう叫んで、彼・・・クロスさんは司令室のテーブルを勢い良く叩いた。今司令室には、ぼく、シグナス総監、エイリアさん、クロスさん、・・・なぜかダイナモさん・・・がいる。 「彼女はまだ本調子じゃないんですよ!? そんな彼女一人で調査に行かせるなんて!! もし途中でイレギュラーにでも襲われたらどうするのですか!?」 彼が怒っている理由、それは数分前に総監が言った言葉。『マリア君、君に調査してもらいたい事がある』が原因みたい・・・ 「クロスさん、私は大丈夫です。それに、先ほどエイリアさんに説明して頂きましたが。私がこれから向かうポイントには、イレギュラーの反応は無いそうです。それに・・・貴方・・・今日、北欧に行かれるのではなかったのでは? 時間は大丈夫ですか?」 昨日も訓練中に『すぐ帰ってくるから! お土産期待して待っててね!!』ってひつこく言われから知ってるんだけど、途中でゼロ兄ちゃんが助けてくれなかったらずっと言われつづけてたのかなぁ・・・ 「え!? エイリアさん!! 今何時!?」 「・・・7時25分よ」 ・・・・・・・沈黙・・・・・・・・ 「っぎゃーーー!! 後5分しかねぇ!!! 失礼しました!!!」
ダッ! 「あ!! マリアちゃん! お土産期待しててね!! じゃ、行ってきます!! 遅れるーーーーー!!!!」 ・・・彼はぼくの手を握り、そう言うと猛ダッシュで司令室を出ていった。 ダダダダダダダダダダッ!!!!! 「ククッ・・・おもしれーヤツ」 ダイナモさんが苦笑してる。あれ? でもダイナモさんって・・・ 「ほんと、誰かさんにそっくりで面白い子ね・・・ねぇ、ダイナモ?」 ・・・そっか、クロスさんとダイナモさんは似てるんだね・・・なんか納得〜・・・そうだ、今のうちにさっきから気になってる事・・・聞いてみようかな? 「ところで・・・ダイナモさん、どうして貴方が、ここにいらっしゃるんですか?」 司令室には普通、用も無いのにハンターが入ってくることはないはずだし。・・・クロスさんは『一人じゃ不安だろ? ついて行ってあげるよ♪』って言って、ぼくの返事も聞かずに勝手についてきちゃったんだけど・・・ 「俺? それは秘密・・・と言いたいところだが・・・マリアちゃんは可愛いから特別に教えてあげちゃいましょう♪」 ・・・うわ〜・・・やっぱりクロスさんと一緒だよ〜 (―ロ―;「俺がここにいる理由、それは・・・」 そこまで言うと、ダイナモさんはスッとエイリアさんの後ろに移動し・・・ 抱きっ!! 「きゃあ!」 ダイナモさんはエイリアさんを抱きしめて・・・ 「エイリアがここにいるからさ〜♪」 だって。 「やっ、やめなさい! ダイナモ!! 子供の前で!!」 エイリアさん・・・嫌がってる・・・のかな? でも顔はあんまり嫌そうじゃないし・・・止めた方がいいのかな〜? ・・・わかんないや。 「コホンッ、すまんが、そろそろ本題に戻ってもいいかな?」 それまであっけに取られてたシグナス総監が口を開いた。あ、今は仕事の話をしてたんだ、いけない、忘れてた・・・ 「ハッ、失礼しました」 ぼくは総監に向き直り敬礼をして、チラッとダイナモさん達を見た。どうやらエイリアさんに叩かれたらしい、ダイナモさんは悲しそうにほっぺたをさすっていた。
話しの内容はこうだった・・・今まで人もレプリロイドも入ろうとしなかった・・・ううん、『入りたくても入れなかった』のほうが正しいかな? ・・・ [G−103] ブロックに昨日の夜、急に高エネルギー反応が現れた。そこで、調査に向かうことになったんだけど今ベース内に残っていてその場所にいける第7空挺部隊のメンバーが、ぼくとクロスさんしかいなかった。しかも、クロスさんの方は今日、北欧に行かなきゃいけない。で、ぼくにそこの調査をしてきてほしい・・・って事みたい。この前の戦いで、ぼくはしばらくリハビリ生活を強いられてて・・・正直、外に出たくてうずうずしてた。 「了解しました。では、現場に向かいます」 敬礼して、司令室を出ようとしたら、エイリアさんに呼びとめられた。 「待って、現場に行く前に、ダグラスのところに行って頂戴。新しく開発したウィルスガードチップが預けてあるから。あと、今回は私がサポートするから・・・がんばりなさい」 「ありがとうございます」 ぼくは一礼して司令室を後にした。
「失礼します、ダグラスさんいらっしゃいますか?」 整備室の扉をくぐって声をかけたんだけど・・・おかしいな、ダグラスさんいないのかな? 「ああ、ごめんごめん。ちょっと待ってて、もう少しで終わるから」 上のほうから声がして、そのほうを見てみると・・・ 「うーん・・・だめだ! 届かない・・・後はこの部品を付けるだけなのになぁ」 どうやらダグラスさんは、大きなメカニロイドの修理をしてたみたいで、上の方の部品を付けるのに苦労してた。 「ごめんね、マリア。後はこの部品を付けるだけなんだけなんだけと、届かなくてさ。あ、今そっちに・・・」 ぼくは翼を広げ、ダグラスさんの隣まで行った。 「私が付けましょうか?」 ダグラスさんはびっくりしたみたいで、何も言わない。 「ダグラスさん?」 もう一度呼んでみる。 「へ!? あ、ああ、ごめんごめん。君が飛ぶとこ、初めて見たからびっくりしてさ・・・じゃあ、お願いできるかな?」 ぼくは部品を受け取った。 「はい、わかりました。それでは指示をお願いします」
「いやあー、助かったよ、ありがとう。もう少しで完成なのになかなか出来ない事ほど歯がゆいものはないよね〜♪」 人の役に立つって事は気持ちいいから好き♪ あ、そうだ、ウィルスガードチップもらいに来たんだった。 「あの、エイリアさんにウィルスガードチップを受け取るように言われたのですが・・・」 「うん、エイリアから連絡あったからちゃんとライフガードから預かっておいたよ。はい、これが最新型のチップだって」 ダグラスさんはそう言ってチップを渡してくれた。 「これね、僕が言うのもなんだけど、凄いんだよ!どんなに強力なウィルスでもこれがあれば感染することは無いんだ!!」 なんだか凄くキラキラした目で、チップの説明をしてくれてるけど・・・そろそろ行かなきゃいけないんだよね・・・ 「あ、あの、私、そろそろ行かなくては・・・」 「え? あ、そっか、・・・気をつけて・・・ね」 ダグラスさんは少し残念そうにそう言って、ぼくを送り出してくれた。 ・・・なんか・・・さっきからみんな優しいような気がするんだけど・・・気のせい・・・かな? |
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