化粧師 −前編−
ソーテリア家次男、サティロスさん。彼は女性が好きで好きで仕方が無い・・・そんな彼の職業はモデル。でも実は、美容院の店長だったりする。モデルは副業・・・今日はそんな彼の美容師としてのお話し。 スタッフA「ねぇ、店長遅くない?(・_・?)」 スタッフB「仕方ないわよ・・・今日はモデルの撮影があるって言ってたもん・・・(・0・)」 スタッフC「何の撮影?(・へ・?)」 スタッフB「たしか雑誌の・・・・そうそう『Mu−(みゅー)』よ(^0^)」 スタッフA「『Mu−』・・・きっとあの女カメラマンに捕まってんのよ・・・店長かわいそぉ〜(ーー;)」 スタッフC「あいつ・・・ちょっとは自分の歳考えろって言うのよ・・・年増のくせに・・・(`へ´)9」 スタッフA「あ〜ん、てんちょー早く帰ってきてぇ(;0;)」 ???「おやおや、これは一体なんの騒ぎだい?」 スタッフA「あ、てんちょぉ♪」 サティロス(以下Sa)「遅くなってごめんよ。さ、今日もお仕事がんばろうか♪」 スタッフ一同「はぁ〜いVv」 ここは『ビューティーサロン・アーディン』 毎日多くの女性客が訪れるこの店の店長はサティロスという名のこの場所で唯一人の男性。容姿端麗な彼目当てでここに来る客も少なくない。だが、ただ顔が良いだけでは客は集まらない。彼は美容師としての腕も一流で、どんな女性でもたちどころに綺麗にしてしまうという・・・女性の間で『神の腕』の持ち主だと崇められているのだ。 そして今日も悩める少女が店のドアをくぐる・・・ 「いらっしゃいませ、ご予約をされていたエアル様ですね・・・どうぞこちらへ」 「いらっしゃいませ♪ご予約をされたお客様には店長の僕がカットとメイクをさせていただいております♪お客様はどのようなヘアースタイルとメイクをご希望ですか?」 予約を入れたお客様は、個室で僕が美容術を施す事になっている。部屋に入ってそう言ってすぐにこの少女・・・いや、お客様が緊張している事がわかった・・・ん?・・・緊張じゃないね、これは・・・怯えてる・・・のかな? 「・・・あ・・・あの・・・こ・・・ここは・・・女の人だけじゃ・・・無かったんですか?」 今にも消え入りそうな声でお客様はそう言った・・・なるほど、そう言う事か。 「スタッフは全員女性ですよ、男は僕だけです・・・・他の者に代わりましょうか?」 明らかにお客様は怯えてる・・・僕に・・・まぁ、良くある事だけどね、『男性恐怖症』の、お客様。 仕方ないから僕はスタッフの子に代わってもらうよう言いに行こうとしたんだけど・・・ クイッ 服の裾を掴まれちゃった・・・(^^; 「・・・あ・・・・あの・・・!・・・だ・・・大丈夫で・・・す・・・から・・・お・・・・お願い・・・シマス・・・!!」 あららぁ、声が裏返っちゃってるよ・・・ 「そうですか・・・では、少しお話しいたしましょう♪」 「・・・おはな・・し?」 僕がそう言うとお客様は不思議そうな顔をして聞き返してきた。 「はい♪お客様に少しでも僕の事を知っていただこうと思いまして♪そうすれば、少しは貴女の緊張もほぐれるでしょう?」 「あ・・・あ・・はい・・・・・・」 予約を受ける時、僕の店では必ず聞く事がある。それは、『何時間くらいかかっても平気か』と言う事・・・別にカットやメイクで何時間もかけるわけじゃない。今回の様に心に何かしら『悩み』を持ったお客様の心を解す事も・・・僕の仕事だと思ってるから。 そして、僕達は少しずつ話しはじめた・・・ 「クスクス・・・店長さんって面白いのね♪」 「そうかい?」 1時間くらいかな?話しをしているうちに彼女はだんだんと僕を怖がらなくなってきた・・・そろそろ・・平気かな? 「だいぶ緊張がほぐれてきたみたいですね♪」 「あ・・・はい・・・・ごめんなさい、お忙しいのにご迷惑をおかけして・・・」 「いえいえ、貴女と楽しい時間を過ごせたのですから迷惑だ何てとんでもない♪・・・・」 そう言って一礼すると、彼女は顔を赤くした。 「・・・僕の手、触れますか?」 僕は彼女の前に跪いて手を差し出す、少女は恐る恐るだが、僕の手に自らの小さな手を重ねた。まだ少し震えてるけど・・・もう大丈夫。 「では、そろそろ始めましょうか♪」 僕は彼女に微笑みかけて、準備を始めた。 この可愛らしい純粋な少女をこれから僕は変身させる。この子の望むままの姿に・・・ まずはメイクから。綺麗な肌をしてるからファンデーションのノリはよさそうだけど・・・この時期に何も考えずに化粧をしちゃうと後で肌荒れおこしちゃうんだよね・・・基本的なベースを終えて、次はファンデーション。色が白いから薄くてOK、このくらいの歳の子は素肌でも充分綺麗だしね♪ フェイスカラーで立体感を出して・・・眉は綺麗にカットしてあったから少し形を整えるだけでOKだね。アイカラーはラインで際立つ透明感溢れる深い眼差しに。リップカラーもあまり派手じゃない物を選んで・・・ 次はカット、長くて綺麗な薄い赤色の髪だけど・・・彼女はばっさり切って欲しいとの事・・・背中まであった髪を肩まで切って、シャギーを入れつつ長さを整えて・・・仕上げはミクスチュアメイクで無造作な束感のある動きを髪にもたせる・・・ そして大人しい印象を受ける少女は大人びた女性へと変身する。 「お疲れ様でした♪」 首筋についた髪を払って、彼女に手鏡を持たせ、後ろがどうなっているのかも見せる。 「・・・・これが・・・私?」 そう呟いて、嬉しそうに微笑む彼女。この瞬間が一番嬉しいね、やっぱり♪ 「有り難うございます、これで・・・私・・・ようやく決心がつきました・・・あの人に・・・気持ちを伝える事が出来ます・・・」 彼女を店の出口まで見送りに行った時、彼女は笑顔でそう言った。僕は、がんばれって・・・彼女の背中をぽんって叩いた・・・ ・・・その日の夕方・・・僕は信じられない光景を目にした・・・ |
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