嫌いなもの

嫌いなもの



ユーマはとても強い女性。そんな彼女に生み出されたヴィシュヌも強い・・・だが、そんなヴィシュヌにも、どうしても生理的に許せないものがあった・・・

 

 

「・・・・あう・・・この部屋あんまり掃除されてないなぁ・・・」

 地下にある資料室、そこでヴィシュヌはエックスに頼まれた調べ物をするためにここに来たのだ。

 もともとハンターベース内はキレイだが、この部屋はあまり利用者もいないためかなり埃っぽく汚れていた。

「やだなぁ・・・こういうとこって・・・アレが出たりするんだよねぇ・・・・」

 不安なときほど独り言が多くなってしまうもの。ヴィシュヌも例外ではなく、この部屋に入ってから気を紛らわすように何かを言っている。

「ようやく80%か・・・・・」

 資料のダウンロードがもうすぐ終わるというとところで・・・不意に視界に入った何かの影・・・・

「あ・・・ははは・・・まさか・・・ね・・・・」

 ゆっくりとその影の方へと視線をやる・・・・そこには・・・

「ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!(声なき悲鳴)

 

 

 ベース内の廊下を歩くクロードとブラフマー。別に一緒にいるわけではなく、ただ廊下でバッタリ会って、そのまま向かっている方向が一緒だったのだ。

「・・・何が哀しゅうて(恋敵の)男と肩並べて廊下あるかなあかんねん・・・」

「・・・・・」

 

 めっさ気まずいわ・・・

 

 二人の男はそれっきり無言でお互いの目的地に着くよう歩いていた・・・・が・・・

 

 だだだだだだだだだだだ!!!!!!

 どーん!!

 

 クロードが誰かに思いっきり抱きつかれ、勢いあまってしりもちをついてしまった。

あーーーーーーーー!!!!!!!!!

 あまりにも突然な出来事で、一瞬誰に抱きつかれたかかわからなかったクロードだったが・・・ブラフマーの耳を劈く叫び声に相手を見なくとも誰が自分に抱きついたのかを悟った・・・と、同時に。

「・・・・・ヴィシュヌさん?・・・・・」

 彼女が何かに怯えていると言う事もわかった。自分に抱きついているその体が小さく震えている・・・

「何か・・・あったんですか?・・・」

 聞いてはみるものの、ヴィシュヌはただ震えて首を横に振るばかり・・・

「と・・・とりあえず、ユーマはんとこ連れて行こうや」

 ブラフマーも彼女に異変に気付き、おそらく今最も効果があるであろう行動を提案する。クロードは頷き、自分抱きついたままのヴィシュヌを抱き上げユーマの研究室に向かって歩き出した。

 

 

「母さん!!」

 部屋に着くなりヴィシュヌはユーマのもとへ走っていった。そして彼女に抱きつき、まるで怖い夢を見た子供のように怯えている。

「ヴィシュヌ・・・アレが出たのか?・・・」

 その問にヴィシュヌはこくこくと頷く。

「・・・そうか・・・お前はしばらくここで休んでいなさい・・・」

 ユーマはヴィシュヌの背中を優しく撫でてやり、彼女を落ち着かせるように言ったのだが、ヴィシュヌは・・・

「で・・・でも・・・データ・・・置いて来ちゃ・・・・・俺・・・行かないと・・・」

 怯えながらもそう言う我が子に、ユーマは苦笑し、シヴァを呼んでこう言った。

「ならば私が取ってきてやる・・・場所は何処だ?」

「地下・・・の・・・第・・・4・・・・・・・資料・・・室・・・です・・・・」

「お前はここでシヴァと待っていなさい・・・・・クロード、ブラフマー、付いて来い」

 

 

「なぁユーマはん・・・ヴィシュヌはんは何にあない怯えとりますんや?」

「・・・それに・・・どうして僕達を連れて行くのですか?」

 自分達の前を歩くユーマに二人は質問をした。すると、彼女は振り向き二人にある物を投げ渡した。

「・・・・殺虫剤?」

 渡された物は殺虫剤のスプレー缶。それを見て、二人は彼女が何に怯えていたのかを悟った。

「・・・昔・・・あの子がまだ電脳空間にいた頃の話だ。」

 ユーマは歩き出し話し始めた。

「プログラムとしてのあの子は既に出来あがっていてな。後はボディを完成させるのみといった状態だった。そんなときだ・・・クラッカーに潜入されてしまってな・・・PC内であの子は囚われてしまったのだ・・・」

 いきなりの昔話に、後ろから付いて来ている二人は顔を見合わせた。一体その話が今のこの状況と何の関係があるのだろうと。

「そのクラッカーの使っていたプログラム(人型)があまりにも悪趣味でな・・・更に奴の流したウィルスも・・・目を覆いたくなるような物だったさ・・・」

「・・・ユ・・・ユーマはん・・・まさかそれって・・・・」

 ブラフマーが顔を引きつらせながら言う・・・

「・・・ゴキブリによく似た形状のウィルスだったのだ・・・しかもそのプログラム・・・破損した腹からそのウィルスを大量に流してくれてな・・・」

「・・・・うえ・・・・・」

 流石にクロードも顔をしかめる。そんな光景、誰だって見たくはない。

「ヴィシュヌはそれを目の前で見てしまってなぁ・・・それ以来あの生物だけはどうしてもダメなんだ・・・」

 そして資料室の前まで来た3人は・・・

「お前達に来てもらったのは他でもない、アレを退治するのを手伝ってもらうためだ・・・あと、ここの掃除もな」

「・・・わかりました」

「退治は別にかまわへんけども・・・・掃除はめんどいなぁ」

  クロードは素直に返事をしたが、ブラフマーはぶつぶつと文句を言っている・・・だが別に断るわけでもなく手伝ってはくれるようだ。

「では、始めるとするか」

 そしてユーマはドアの開閉ボタンを押した・・・・

 

 

 

「はぅ・・・・やっぱりだダメなんだよねぇ・・・・」

 ユーマの研究室にある自分の椅子に座り、シヴァの頭を撫でながらため息まじりにヴィシュヌが言った。

「クゥ?」

 そんな彼女の様子に、シヴァは首を傾げ心配そうに鼻を鳴らした。

「・・・ん〜・・・ねぇシヴァ、もしアレが今出てきたら、俺の事守ってね?」

「オン!」

 尻尾を振りながら返事をする愛犬を、彼女は撫でながら微笑んだ。

 

 

 ユーマはとても強い女性。そんな彼女に生み出されたヴィシュヌも強い・・・だが、そんなヴィシュヌが、どうしても生理的に許せないもの・・・それは・・・

 

 

「・・・ゴキブリだけは・・・どうしてもダメなんだよね・・・」

 

 

 

 END







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