オモチャノヘイタイ
街外れのスクラップ置き場。今日もまた、ゴミが捨てられる・・・ 『・・・ここは・・・・どこ?・・・・・』 俺は朦朧とした意識の中でぼんやりとそんな事を考えながら目を開けた・・・ 『眩しい・・・』 今まで感じたことのないような強烈な光に、俺は一体何がこんなに光っているのかわからなかったけど・・・しばらくしてその光の正体が『太陽』だとわかった・・・ 『でも・・・どうして俺は外にいるんだ?』 わけがわからなかった・・・その時、俺はまだ自分が『棄てられた』ということに気が付いていなかったんだ・・・ その場所にじっとしているわけにもいかないから、俺は状況把握もかねて辺りを探索することにした。 しばらく歩いていて、ここが『スクラップ置き場』だとわかる。周りにボロボロになったレプリロイドやメカニロイドの『屍骸』 『どうして俺はこんな所にいるんだ?・・・しかも丸腰で・・・』 グオォォォォォ!!! 「うわぁ!!」 ゴミの山から急に飛び出してきたのはワイバーンタイプの大型メカニロイド。センサーが壊れているのか、それともそれがヤツの攻撃方法なのか・・・そのメカニロイドは辺り構わず暴れ出した。 「くっ・・・このぉ!!!」 俺は近くに転がっていた鉄パイプを掴むと、それを構えてジャンプし、ヤツの脳天に突き刺した。 ギシャァァァァァァ!!! メカニロイドは断末魔の悲鳴を上げその場に崩れ落ちる・・・ 『何なんだ一体・・・これは何かの試験なの?』 思考がまとまらない、疑問だけがいくらでも出てくる・・・ 「ねぇ、それ早く食べないと盗られちゃうよ?」 不意に声をかけられて、俺は咄嗟に飛退いて構えた。けど、視界にそれらしいものを見つけられなくてきょろきょろしてると・・・ 「どこ見てるの?ここだよここ!キミの足元」 言われるまま視線を落とす・・・・・・・・そこにいたのは・・・・・・・ 「レイビットォ!?」 俺に話しかけていたのは元々ロボット動物園で飼われていたウサギ型のメカニロイド・・・ 「え?!なにが!??一体???どうなって!?!?」 俺はまず自分の思考回路がおかしくなったと思った。だって、目の前にいるレイビットはただのメカニロイド、言葉を発するなんてできるはずがないんだから。 「ねぇねぇ、これ、ちょっと僕にわけてくれない?そしたら色々教えてあげるからさ・・・僕の事も、ここの事も・・・・」 俺はとにかく、今は情報が欲しかった。だからこのレイビットの言葉を信じるしかなかったんだけど・・・そういえば。食べるって?盗られるってどう言う事だろう? 「何してるの?ほらこっちにおいでよ」 呼ばれるままに俺は足を進め、さっき倒したメカニロイドのちょうど胸部の前で立ち止まった。 「この装甲、はがせる?」 「多分・・・出来ると思う・・・」 俺はワイバーンのボディがへこんで出来た装甲の隙間に指を入れて、力いっぱい引き剥がした。 ベキベキベキィ!! ボルトの部分が老朽化して脆くなってたんだろう。装甲は思ってたよりも簡単に剥がれて、メカニロイドの胸部装備が剥き出しになる。 「・・・これを・・・どうするの?」 「どうするって、食べるのさ。僕達はこうやってエネルギーを補給しないと生きていけないんだよ・ ・はい、これ。僕は少し貰ったからあとはキミの分だ」 レイビットは器用にワイバーンのエネルギータンクを取り出すとそこからエネルギーを少しだけ吸収して俺にタンクを投げてよこした。俺はどうして良いかわからなくて、タンクを持ったままただ突っ立っているだけで・・・ 「・・・この『いらないオモチャ箱』に棄てられた物達はね・・・こうやってエネルギーを取っていかないと、すぐに動けなくなっちゃうんだよ・・・ほら、キミも早くそれを食べて。他のヤツらが来ちゃう」 途中から何を言っているのかわからなかった・・・・棄てられた?誰が?どうして? 「棄て・・・られた・・・?」 「・・・やっぱり気付いてなかったんだね・・・って言うか、認めたくなかったのかな?キミは棄てられたんだよ、ここにいる事が何よりの証拠」 「嘘だ!!だって、昨日もみんな俺の事が必要だって!」 「それは本当に昨日の事?」 その言葉に・・俺はなにも言い返せなかった・・・ 「ヤツらのやりくちだよ、ちょっと前までお前が必要だ、お前さえいれば全て上手くいく。とか上手い事いっといてさ、いらなくなったらすぐポーイだ」 「・・・なんで・・・・そんな事知ってるの・・・?」 いくらなんでも詳しすぎる・・・これじゃまるで・・・ 「だって、僕もそこの奴等にに棄てられたんだもん」 「・・・は・・・ははは・・・そんなの・・信じられると・・・」 「ま、信じる信じないはキミの自由だよ・・・って言いたいところだけど、ここじゃそう言ってもいられないんだよね・・・ほら、お客さんのお出ましだよ」 そう言われて、俺は視線を移動させる。その先にはボロボロになってるけど・・・俺と同機種と思われるタイプのレプリロイドが数体出てきた・・・ 「あいつらの狙いは君の持ってるのと、僕たちのエネルギー・・・どうする?戦う?それともこのまま僕の話を信じないで助けを待ちながら無様に逃げ回ってる?」 「・・・それって選択肢になってないよ・・・」 俺は苦笑して、手に持っていたタンクのエネルギーを全部吸収して、ワイバーンの頭に突き刺さったままだった鉄パイプを引き抜き・・・構えた。 「そうこなくちゃね・・・あ、そうだ。これと、これと、この部品組み合わせてみてよ。その鉄パイプより良い武器になるよ♪」 言われるままにパーツを組み立てていくと、なんだか見覚えのある形が出来た。 ヴォン・・・ 「はい、簡易セイバーの出来上がり♪なるべく動力炉は壊さないように戦うんだよ」 無言で頷いて・・・俺は数体のレプリロイドに向かっていった・・・・・ 「これからどうしたらいいの?」 レプリロイドを倒したときに付いたオイルを拭いながら俺はレイビットに聞いてみた。本当は信じたくなかったけど・・・さっき大きな看板を見ちゃったんだ・・・『A
Wastes Disposition Space(廃棄物処理場)』と書かれた大きな看板・・・ 「そうだねぇ・・・キミさえ良ければ、僕と一緒に行動してほしいんだけど・・・」 「君と?」 「うん。僕は見てのとうり戦闘能力が高いわけじゃないから、いつも余り物のエネルギーで生きてきたんだ・・・でも、そんな状態じゃいつまで生きていけるかわからない・・・だから・・・」 なるほど・・・そういう事か・・・ 「・・・つまり、俺に君を守ることとエネルギーの確保をしてほしいって事だね」 「・・・簡潔に言うとそうなるね」 「じゃあ、俺の利点は?」 まさか自分に利益がないのに引き受けるわけには行かないしね。 「キミ、情報収集は得意かい?」 「・・・あんまり・・・・」 正直、俺は戦闘を中心にいつも訓練させられてたから・・・情報収集とか、そういうのってかなり苦手なんだよね・・・ 「良かった。僕は大得意なんだ♪だから今まで生きてこれたって言うのも有るんだけどね。僕はキミに様々な情報を提供するよ。だから、そのかわり・・・」 「OK、いいよ・・・商談成立だ。俺が君を守ってあげる。その代わり君は俺に得られた全ての情報を提供すること」 ま、どうせ一人でいても良い事ないし・・・情報が得られるんならそれでいいや。 「うん。わかったよじゃあ、これからヨロシクね・・・えっと・・・」 「55708」 「え?」 「55708(ごーごーななまるはち)それが俺のナンバー。それ以外で呼ばれたことないからそう呼んで」 俺のナンバー・・・研究所の人間たちはナンバーでしか俺を呼んでくれなかった・・・ 「55708ねぇ・・・あ、僕は『Leibit Tipe[MIO](レイビット タイプ[ミオ])』だよ・・・ん〜・・・55708って呼びづらいね・・・」 「そう?」 「・・・よし、これからキミは『ごーくん』だ!」 「ごーくん?」 「そう、その方が呼びやすいからね」 俺が・・・『ごーくん』かぁ・・・だったら。 「・・・じゃあ君は『みーくん』だね」 「みー・・・くん?」 「だって、君。『タイプ[ミオ]』でしょ?だからみーくん」 「みーくんかぁ・・・えへへへ♪」 「どうしたの?」 「僕、今までそういう風に呼んでもらった事なかったからさ・・・」 「それは俺も一緒だよ・・・・これから宜しくね、みーくん」 「うん!ヨロシクね、ごーくん♪」 それから、俺達は色々話をした。研究所にいたころの話とかお互いの事を色々話して・・・俺達は友達になった・・・・ それから俺達は何をするのも一緒だった・・・二人でいれば何でも出来た・・・・怖いものなんて何もなかった・・・俺達は親友だった・・・・このまま二人で・・・ここから必ず逃げ出そうって約束した!!・・・だけど・・・・ その日も、いつもみたいに狩りを終えてみーくんと俺の分のエネルギーを持って・・・俺達の巨大メカニロイドの残骸で作った『基地』に帰った・・・ いつもみたいに『ただいま』って言うはずだったのに・・・・ 「・・・?なんだろう・・・・・」 基地のある場所辺りから煙が・・・まさか!? 俺は走った。手に持っていたタンクを投げ捨て、全力で・・・そして・・・・基地についた俺が見たのは・・・ 「みーくん!!!」 「・・・ご・・・くん?」 変わり果てたみーくんの姿・・・ボディーは滅茶苦茶にされエネルギーもほとんど奪われた状態で・・・確かに、俺も他のメカニロイドやレプリロイドに同じような事はしてきた・・・けど!・・・こんな小さなみーくんからエネルギーを奪うなんて・・・・ 「ご・・・くん・・・・ど・・・こ・・・・?」 「みーくん!?ここだよ!!俺はここにいるよ!?」 「え・・・へへ・・・せん・・・さ・・・壊・・・れちゃ・・・ってさ・・・何・・・も・・・見・・・えない・・・ん・・・だ・・・」 みーくんが言葉を発するたび、剥き出しの回路に電流が走る・・・ 「ご・・・くん・・・ごめ・・・・ん・・・ネ・・・いつも・・・・イッショ・・・イラレ・・・な・・イ・・・・・・・・・・・」 「みーくん!?みーくん!!み・・・・あ・・・う・・・あ・・・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 ガバッ!! 「あ・・・・っはぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・・・・ゆ・・・め・・・・・?」 目を開けた俺のいる場所は・・・・あの廃棄物処理場の基地内じゃなくて・・・ハンターベースにある俺の部屋・・・ 「何で・・・今更・・・・・・・」 マリアに出会ってから見ることのなくなった夢・・・悲しい記憶・・・・みーくんを守ることの出来なかった非力な自分が恨めしくて・・・ 「・・・今も・・・たいして変わってないか・・・」 俺は大切な人をちゃんと守れたためしがない・・・情け・・・ないな・・・・・・・ ベッドから降りて渇いた喉を潤すために冷蔵庫の中のコーラを一気飲みする。しゅわしゅわと炭酸のはじける感覚が喉を通っていき、少しだけ・・・嫌な気分が晴れたような気がした・・・ほんの・・・すこしだけ・・・ 「・・・・ぷはっ・・・・・」 もう眠る気がしなくて、出窓に腰掛けて外を眺める。俺の部屋は結構高い場所にあるから街を一望出来るんだ・・・空には月も星も出ていない・・・街の明かりがその天然のライトを消してしまっているんだ・・・ まだ夜明けまで時間がある。さて、どうやって時間を潰そうか・・・そう考えていると・・・ ピーピーピーピー 通信機に連絡が入った。俺はあわててそれを手にとり返事をする。 「は、はい!こちらウィルド!!」 『ウィルド、スクランブルだ!!10分以内に装備を整えて格納庫に来い!!』 ぷつっ・・・つーつーつー・・・・・ 「え!ちょっ、隊長!?・・・・10分以内って・・・マジっすか?」 俺は急いで出動準備を整え、部屋を飛び出した・・・まぁ、ちょうどよかったのかもしれない・・・・あんな夢を見ちゃったから・・・今は・・・思い切り暴れて・・・・何も・・・・考えたくないから・・・・ |
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