Delete Of Heart



キラと一緒にいたのは・・・違うのに・・・。

たまたま趣味が一緒で・・・。

ウィルドさんはいつも忙しそうで・・・。

我侭が言えなくて・・・。

キラと遊んでただけなのに・・・。

キラはぼくに付き合ってくれただけなのに・・・。

 

結局は・・・一人よがりだったんだ・・・。

 

ウィルドさんはぼくを好きでいてくれると思ってた・・・。

 

こんな感情迷惑なんだ・・・。

 

もう・・・ぼくはいらないんだ。

所詮彼女が死んでしまったと思っていたから。

寂しさを紛らわす束の間の道具だったんだ。

 

愛なんていらない。

感情なんていらない。

笑う事も。

怒る事も。

泣く事も。

 

 

・・・今のぼくにはもういらないんだ。

 

 

 

 

「・・・冷たい目をするようになったね、アリスは・・・」

アリスは話しかけてくるキラを無視して、自室に向かう。

「アリス・・・アリス!!」

キラはとっさにアリスの腕を掴む。

アリスがキラのほうを振り向くと、キラは一瞬、ビクッと体を震わせる。

彼女の表情はなにも感じさせなかった。

「・・・消えて。目障りなの」

アリスはそう言うと、強引にキラの手を振り払う。

「・・・アリス・・・どうしたんだよ・・・」

キラは深く溜息をつくと、後ろを向いて歩き出した。

 

 

プシュ・・・

 

「・・・ッ・・・キラ・・・ごめんね・・・」

ドアに寄りかかり、アリスはずるずると座りこむ。

「・・・ぼく・・・なっちゃったんだ・・・悪魔に・・・人殺しに・・・」

 

いつだって嫌いだった。

 

たとえイレギュラーでも殺めることが。

 

もう血なんか見たくない。

 

ハンターなんかやめたい。

 

アリスの無機質な瞳からは、ぽろぽろと涙が流れていた。

 

 

澪・レイビートがハンターベースに現れてから3日。

3日と言う日が、アリスの心を変えた。

アリスの心は、任務にも影響を与えていた。

残虐非道。彼女は仲間内で「悪魔」と呼ばれていた。

いくら敵が命乞いをしようと、関係なく殺す。

感情が一切顔に表れない。

彼女から唯一感じ取れるのは深い悲しみだけ。

瞳からは生気が感じられない。

キラは苛立っていた。

こうなってしまった理由を、アリスが自分に話してくれない事に。

 

 

 

「・・・キラ、私は何でも知っているわけではないのだよ」

雪の降っているサクヤの部屋で話しを聞こうとしたキラに向けてのサクヤの第一声はこれだった。

「・・・原因は大体わかるがな」

「その前にどうして雪が降っているのか聞きたいけどな」

「あー・・・あれだ」

サクヤの指の先にあったのは・・・。

 

エアコン。

 

「エアコンって雪も出せるんですか?」

「・・・少なくとも私はそう認知している」

サクヤはそう言うと、まあ座れ、とキラに椅子をすすめる。

「で、原因は・・・」

「うむ。確かだな。澪・レイビートという少女が来た時辺りだったな。医療室から走って出てきてな。そのままどこに行ったかわからなくなったのだが・・・」

サクヤが口篭もる。

あのサクヤが口篭もるのは珍しい。

「・・・なにが・・・」

「あまりいうべき事ではないと思うが・・・格納庫でな・・・」

キラはサクヤの言葉を聞くと、唇を思いきりかむ。

唇からは血が流れていた。

 

 

「泣いていたんだ。一晩中・・・ずっと・・・次の日みたら目が腫れていてな・・・」

 

 

キラはサクヤに頭を下げると、部屋から飛び出す。

サクヤは止めようかと思ったが、それをやめた。

どこに行くかは見当がついていたし、それが必要なことだとも思ったから。

 

 

 

「・・・最悪・・・あいつ・・・」

キラは走りながら呟く。

 

(許せない。アリスをあんなにしたのが・・・あいつだなんて・・・)

 

(いつだってアリスは嬉しそうに俺に話してくれてたあいつだなんて!)

 

(アリスはいつも悲しそうだったのに・・・あいつ以外じゃそれは消せないのに!)

 

(どうしてだよ!!)

 

キラは一つのドアの前で、急停止する。

そして、ノックもしないでいきなりドアを開ける。

「なっ・・・火澄!?」

キラは息を切らせながらも、ずかずかと部屋に入っていく。

「キミ・・・だ・・・」

澪がそこまでいった瞬間・・・

 

バキッ!!

 

ウィルドの体が浮いて、棚に突っ込む。

「っつ・・・何・・・」

いい加減にしろ!!

キラの言葉で、ウィルドが何か言おうとしたのが止まる。

「お前は人間失格だよ・・・アリスがどんな気持ちかも考えないで・・・アリスが苦しんでるのに・・・手を差し伸べないで他の女の子と遊んでるなんて・・・」

キラの目に溜まっていた涙が頬を伝う。

「アリスは強くないんだ!!生半可な気持ちで・・・好きって言葉を使うんじゃねぇよ!!

キラはそれだけ言うと、ウィルドの部屋から走って出ていった。

澪は急いで頬を冷やそうとしたが、ウィルドはその場で呆然としているだけだった。







prev novel next

女の子お絵かき掲示板ナスカiPhone修理