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「・・・見合い・・・ですか?」 司令室に来たケインの言葉を、聞きなおす様にシグナスが言った。 「そうじゃ、お前さんの設定年齢なら、嫁さんがおってもおかしくないじゃろうて、丁度知り合いの学者の家に良い娘さんがおってのう・・・」 「ちょ・・・ド、ドクター!たしかに人間ならば結婚している年齢かもしれませんが・・・私はレプリロイドですよ?」 このまま黙っていたら完璧に自分の言い分を聞いてもらえずに見合い決行になりかねないと思ったシグナスはDr.ケインの話しを遮って言った。まぁ、見合いをしたくない理由があるわけなのだが・・・ 「そんな事はわかっとるわい、じゃがわしは・・・お前さん達レプリロイドにも心がある以上、人間と同じじゃとおもっとるんじゃ・・・お前さん達にも、結婚という・・家庭を持つという幸せを感じてもらいたいんじゃよ・・・」 シグナスに背中を向け、寂しそうに言うDrの姿を見て、きっぱりと断ることに多少罪悪感を感じてしまいそうになる・・・が。 「もちろんふたりのDNAデータをもとに子供を作ることも可能じゃ!」 クルッと振り向いてビシッ!と親指を立てる・・・一瞬でも罪悪感を感じた事を悔やんでしまうそんな状態に、シグナスは額を押さえこう言った。 「・・・ドクター・・・申し訳ありませんが私は・・・?」 「?ドクターならさっき嬉しそうに出て行ったわよ?見合いがどうとか言ってたけど・・・」 おそらく入れ違いに入ってきたのだろう、エイリアが不思議そうにこちらを見ながら言う・・・ や・・・やられた・・・・ シグナスの顔が引きつり一気に青ざめる。 「エイリア、悪いが私はドクターを探しに行く!」 「え!?ちょっとシグナス!!」 シグナスは急いでアーマーを解除し、私服姿になってDrを探しに司令室を飛び出した。後にはエイリアの怒鳴り声が響いていた・・・
「ねぇねぇ。総監お見合いするんですって」 「えぇ!?私は結婚するって聞いたわよ?」 「私は子供がデキたって聞いた〜」 「きゃー♪それってデキちゃった婚ってやつじゃないの!?」 「「「「総監もなかなかやるわねぇ〜♪」」」」 すでに女性隊員の間で噂が広がっている様だ、しかも尾ヒレが付いて・・・いや、尾ヒレどころか背ビレや胸ビレまで付いているといった感じだ。さらにそう言う噂話が大好きな女性隊員によってどんどんと広がる始末・・・シグナスは会う隊員全員に『結婚したのか?』と聞かれると力いっぱい『NO!!』と言ってまわっているので老人一人探すのに物凄く時間がかかってしまう。 一体ドクターはどこに行ってしまわれたのだ!? 走りながらそう考えていると、向かいがわからエックスとゼロが歩いてきた。 「おう、シグナス。お前結婚したって・・・」 ゼロの言葉に・・・ 「私は結婚などしていないぃぃぃ!!!」 ずだだだだだだだだ!! 「・・・なぁエックス・・・俺、あんなに速く走るシグナス見たのはじめてだ・・・」 「・・・・・・・・俺も・・・・・・・・・」 何となく凄い物を見てしまったという気分になった二人だった。
丁度シグナスがDr.ケインを探してベース内を走りまわっているとき、ユーマの研究室にて。 「ねぇ、母さん・・・シグナス総監が結婚するって、ほんとかな?」 ヴィシュヌは資料用フォトを整頓しながらPCに向かって黙々とキーボードを叩くユーマに話しかけた。 「・・・私はただの噂だと思うが・・・出所はDr.ケインとみた・・・」 キーボードを叩く手を止め、煙草を吹かして言うユーマの言葉に、ヴィシュヌは苦笑した。 「たしかに・・・ケイン博士ならそう言う事言い出しそうですね・・・」 そんな他愛も無い話しをいていると、誰かが研究室のインターホンを押した。 「あ、俺見てきます」 ヴィシュヌはドア前のインターホン用モニターを見に行った。そこに映っていたのは・・・ 「姫・・・?ど、どうしたの姫!!」 ヴィシュヌは慌ててドアを開け、顔色の悪く今にも倒れそうな闇姫を支えた。 「も・・・申し訳ありません・・・・気分が優れないので・・・少し、見ていただこうと思いまして・・・もう、大丈夫です・・・一人で、歩けますわ・・・」 そう言いながらヴィシュヌの手から離れたとたん・・・・ ばったーん!!! 「わー!!ひ、姫ー!?!?」 闇姫は倒れて気絶してしまった・・・
「・・・・やっぱり、精神的な事が問題でしょうか?」 ヴィシュヌは闇姫をベッドに寝かせ、人間で言うところの脈拍などを調べながらユーマに聞いた。 「・・・そうだな・・・今ベース内で噂になっている話しは・・・闇姫には絶えがたいものだろうからな・・・」 ユーマもベッドの隣で闇姫にコードをつなげながら言う。 「総監、捕まえてきましょうか・・・」 姫を心配そうに見つめながらそういったヴィシュヌに、 「そうだな・・・この場合、本人から直接真相を聞いた方が良いだろう・・・」 と、シグナスを探しにヴィシュヌを行かせることにした。
「う・・・ここ・・・は?・・・・」 「・・・目が覚めたか?・・・お前の名は?」 「ん・・・・闇姫と・・・もうします・・・・」 目が覚めた闇姫に、簡単な質問をいくつかしたユーマはNPCに詳細を記入しつつ、 「・・・ふむ、記憶(記録)障害はなさそうだな」 と言って微笑んだ。 「気分はどうだ?」 「あ・・・はい・・・・少し、すっきりいたしました・・・・」 だがまだ顔色はあまり良くない。ユーマはそんな彼女を気遣って、もう少し寝るように進める、闇姫も素直に横になった・・・ ずだだだだだだッキキー――――!!!!!ズベッ!! 「うおっ!?」 ゴシャ!! 「うわぁ!?大丈夫ですかぁ!!」 「・・・・・今・・・物凄い音が聞こえなかった・・・・か?」 廊下から聞こえてきたなにかがぶつかる音に、ユーマと闇姫は顔を見合わせた。 「そ・・・総監連れてきました・・・けど・・・本当に大丈夫ですか?」 「あ・・ああ、大丈夫だ・・・」 ヴィシュヌがドアを開け、シグナスと共に入ってきたのだが・・・シグナスは何故か涙目になりつつ後頭部をさすっている。 「・・・とりあえず何が起こったかは聞かないでおくが・・・私とヴィシュヌはまだやらねばならん事が残っているのだ、闇姫のことを頼むぞ」 ユーマはそんなシグナスの姿を見て、苦笑まじりにそう言うとヴィシュヌを連れて部屋を出て行った。残された二人は多少ギクシャクしながら話しを始めた。 「・・・倒れたと聞いて・・・心配したぞ・・・・もう、大丈夫なのか?」 シグナスはベッドの隣にある椅子に腰掛けて、闇姫の顔を心配そうに見つめた。 「は・・・はい、もう大丈夫ですわ・・・・・・・・・・あの・・・・シグナス様・・・・・・」 闇姫は何かを言おうとして黙ってしまった。 「ん?・・・どうした?」 そう優しく言ったシグナスに、ためらいがちに姫が言った言葉は・・・ 「あの・・・・『お見合い相手の女性を気に入って嫌がる相手を無理やり押し倒し子供を孕ませて結婚にこじつけた』と言うのは・・・本当の事なのですか!?」 ふらぁ・・・・ ゴス!!それを聞いた瞬間、シグナスは座っていた椅子からそのままの形で倒れこみ頭を打った・・・ 「きゃー!!し、しぐなす様ぁ!!!」 闇姫は慌ててベッドからおり、シグナスを抱き起こす。 「シグナス様!大丈夫でございますか!?シグナス様!!」 シグナスは頭お押さえつつも大丈夫だと言って闇姫を安心させるように笑った。そして、 「姫、そのような話しは根も葉もないただの噂だ・・・たしかに見合いの話しはあったが・・・」 その言葉に多少闇姫の表情が暗くなる・・・それを知ってかシグナスはこう続けて言った。 「もちろん断ってきたがな・・・君に渡したい物があったのだが、余計な時間を食ってしまったよ」 「え?・・・・わたくしに・・・ですか・・・・?」 そう笑顔で言ったシグナスに、闇姫は不思議そうに聞き返す。 「・・・これを・・・君に受け取ってもらいたいんだ」 そう言ってシグナスがポケットから取り出したのは小さな箱・・・闇姫はそれを受け取り、中を見た。 「・・・シグナス様・・・」 姫の目には嬉し涙がたまっていて・・・そして彼女は優しく微笑んだ。 「受け取って・・・もらえるか?」 「・・・はい・・・」 その返事を聞いてシグナスは箱に入っていた『エンゲージリング』を闇姫の左の薬指にはめる。そのエンゲージリングはシンプルなデザインで闇姫の誕生石、アメジストが埋め込まれている物だった。 「私の誕生日・・・覚えていてくださったのですね・・・ですが、指のサイズはどうやって・・・?」 「前にな、ユーマに聞いておいたんだ・・・姫・・・式はいつになるかは解らんが・・・ずっと・・・私のそばにいてほしい・・・」 そう言って闇姫を優しく抱き締める・・・闇姫もその腕に抱かれ、とても幸せそうな笑顔を浮かべている・・・そして・・・触れるだけの幼いキス・・・・ 「絶対に・・・幸せにするから・・・」
FIN
おまけ
「・・・ところで姫・・・君が聞いたその噂話は、一体誰にきいたのだ?」 「ダイナモさんですわ」 「・・・そうか・・・」 シグナス、携帯を取り出し誰かに電話する 「ああ、久しぶりだな、そうだ・・・ああ・・・今回頼みたいのは発電機(と言う名前のやつ)を綺麗にして(消し去って)ほしい・・・ああ・・・ああ・・・では、また・・・」 「どうかなさいましたの?」 シグナス、携帯をしまい姫に笑顔でなんでもないと答える 後日その日を境にダイナモの姿を見た者はいない・・・(これは冗談です(^^;) |
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