マリア

マリア



 ぼくは自分の部屋につくなりベッドに倒れこんだ。

「ほえ〜・・・疲れたよ〜・・・」

 ハンターって思ってたよりずっと大変なんだ・・・『外』に出れるようになるまでは、ケインおじいちゃんのお話ししか聞いたことなかったし・・・でも・・・がんばらなくちゃ、せっかく兄ちゃん達と同じハンターになれたんだから! ・・・でも、お布団、とっても気持ちいい・・・このまま寝ちゃおうかな・・・・・・・

 倒れた姿勢のままぼくは、うとうとし始めてた。

「こら、そんな格好で寝たら風邪ひくぞ」

 ほえ? だれ? ぼくは瞼をこすりながら声のするほうを向いてみた。そこにいたのは・・・

「む〜・・・ゼロ・・・兄ちゃん? どうしたの〜?」

 あれ〜、何でゼロ兄ちゃんがいるの? ぼく、部屋間違えたのかな? そんなことを考えながら部屋を見渡した。やっぱりぼくの部屋だ。おかしいなって考えてたら、兄ちゃんはベッドの端に座って。

「お前が心配だから見に来ただけだ。さっき廊下で見かけたら、足元ふらふらしながら歩いていたからな・・・」

 あやや、見られてたんだ・・・

「えへへ、今日の訓練・・・張り切りすぎちゃったみたいなんだ。なんか疲れちゃって」

 ちょっと恥ずかしい、なんかカッコ悪いよ〜。

 ぼくは恥ずかしくて下を向いたまま指遊びをしてた。そしたら兄ちゃんのおっきな手がぼくの頭をなでてくれて。

「あまり無理はするな。疲労で倒れてしまったら、それこそ意味が無くなってしまうからな・・・」

 ゼロ兄ちゃんの手、ぼくは好き。初めてお兄ちゃん達に会ったときもゼロ兄ちゃんは頭をなでてくれたの。兄ちゃんになでてもらうの、気持ちいい。

「俺はまだ仕事が残っているから戻るが・・・そうそう、エックスが後で来るって言ってたぞ。じゃあ、おやすみ」

 兄ちゃんはぼくのおでこにキスをして、部屋を出て行っちゃった。それからちょっとして、ドアをノックする音がしたの。

「はい、どうぞ・・・」

 入ってきたのはエックス兄ちゃんだった・・・なんだ、しゃべり方変えなくてよかったんだ。

「ちょっといいかな? ・・・もしかして、寝るとこだった?」

 む〜、びみょうに正解。

「眠いけど・・・まだ大丈夫。さっきゼロ兄ちゃんが来て、兄ちゃんが来るって事言ってたし・・・」

 ぼくが目をこすると、エックス兄ちゃんは。

「ごめんね、すぐ終わるから。少し目をつぶってて」

 って言ってぼくの隣に座った。

 ぼくが目をつぶってると、兄ちゃんはぼくの手に何かを握らて、ぼくの手を持ったまま。

「はい♪もう目をあけていいよ、俺とゼロからのプレゼント♪」

 ぼくはゆっくり目をあけて、手の中のものを見た。

「うわぁ、かわいいVv」

 兄ちゃんがぼくにくれたのは、小さなお月様の形のペンダント。

「お守りだよ。これから、ハンターをしていく以上いろいろ危険な目に遭うのは必然だから・・・ゼロと一緒に選んで買ったんだよ♪」

 ゼロ兄ちゃんと一緒に? ・・・でも・・・さっきゼロ兄ちゃん、そんな事一言も・・・

「ゼロ、恥ずかしかったんだよ。人にプレゼントなんてしたことないって言ってたし」

 兄ちゃんはクスクス笑って、『そろそろ行かなきゃ』って・・・

「じゃ、明日からもがんばってね。おやすみ」

 そう言ってぎゅって抱きしめてくれたの。エックス兄ちゃんの匂いがする・・・優しい匂い。初めて兄ちゃんたちに会ったときも、エックス兄ちゃんは抱きしめてくれた。『はじめまして、俺はエックス、そして彼がゼロ。君のお兄ちゃんだよ・・・』って言いながら。エックス兄ちゃんの匂いは、ぼくを安心させてくれる。ぼくの大好きな匂い・・・

 エックス兄ちゃんもいなくなって部屋に一人になっちゃった。少しさびしい・・・でも、明日からまた厳しい訓練があるんだから、早く寝なきゃ。お風呂は・・・今日はシャワーですませておこっと。

 

「なあ・・・今日、隊長遅くねェ?」

武器を使っての訓練中に、ぼくの相手をしてくれてた、・・・この人の名前はたしか・・・えっと・・・あ! そうそう『クロス』だった・・・と思う・・・が急に話しかけてきた。

「そう・・・ですね、たしかにいつもなら、すでに来られてもおかしくない時間帯ですが・・・」

 あう〜、敬語って難しい・・・挨拶の日に思いっきり緊張しちゃってようやく言えたしゃべり方がその日から抜けなくて・・・今はもう皆このしゃべり方が普通だと思ってるし・・・いまさら変えれないし・・・ハァ・・・兄ちゃん達と、じいちゃんの前では普通にしゃべれるのにな〜。

 って考え事してたら、クロスさんがいつのまにか隣まで来てた。

「だろ〜! やっぱ何かあったのかな?マリアちゃんはどう思う?」

 何か、かるい感じの人・・・他の人はたいてい『さん』付けで呼ぶのに何でこの人だけ『ちゃん』なんだろう? いつも気になる・・・

「たしかに、何かあったのかもしれません。先ほどから先輩方の姿も見えませんし…」

 実際、トレーニングルームにいるのはぼく達新人ハンターだけだったもん。

 ぼくの所属する第7空挺部隊は今回ぼくをふくむ6人のハンターが新しく入ったんだ。

「気にならない?」

 クロスさんみたいな人を、好奇心の塊って言うのかな。すごいわくわくしてるのが解る。でも、いつもゼロ兄ちゃんに言われてる言葉が頭をよぎった。

『好奇心は時に己の身を滅ぼす、マリア・・・お前も気をつけろ・・・』

 

 だからぼくは、素直に思ったことを言ってみた。

「気にはなります。ですが、何かあったとしても出動命令がない限り、我々はトレーニングをしておいた方が良いと思います」

 クロスさんは納得がいかないみたいだけど、今ぼく達が動いても何も出来ないと思うから・・・

「チェッ、つまんねぇーの・・・でもま、たしかにそうかもな〜・・・でも俺ちょっと疲れちまったから、少し休むな。マリアちゃんも休んだら?」

 クロスさんはそう言ってぼくの腰に手を回そうとしてきたから、ぼくはそれをさっと避けた。一応第0特殊部隊(通称忍び部隊)の隊長、ゼロ兄ちゃんの妹だからね、これくらいは出来るもん。

「私は、もう少しトレーニングをしておきます・・・」

 軽い男の人はあまり好きじゃないもーん。・・・でも、もともと二人一組で訓練してたから・・・一人でどうしよう・・・とりあえずイメージトレーニングでもしようかな?って思ってたら・・・急にサイレンが鳴り出して・・・

 ヴィー!!ヴィー!!ヴィー!!ヴィー!!ヴィー!!

『ベース内に残っている第7空挺部隊の者は直ちに司令室に集合せよ!!繰り返す!!・・・』

「俺達のことだな・・・じゃ、司令室に向かいますか!!」

 サイレンが鳴るくらいなんだから、急がなきゃいけないと思って、皆で走って司令室に向かった。クロスさん、すごく嬉しそう・・・でも、ぼくは少し怖い場合によってはこれが初めての出動になるんだもん・・・

 

 ぼく達が司令室についた、そこにいたのはボロボロに傷ついた先輩数名と、ライフセイバー、エックス兄ちゃん、ゼロ兄ちゃん。シグナス総監とエイリアさん。・・・みんな、なんだか怖い顔してる・・・

「まずは、悲しい知らせをせねばならん。君達の隊長、イーグリードが殉職した・・・君達の先輩達の大半もだ・・・」

 ぼくは一瞬自分の耳を疑った・・・だって、VTRデータでしかまだ見た事無かったけど、隊長、すごく強かったし、先輩達だって、みんな特Aクラスだったのに・・・ぼくは無意識のうちにお守りのペンダントを握り締め、兄ちゃん達のほうを見ていた。その時、エックス兄ちゃんと目が合って・・・兄ちゃんの目には涙がたまっていて・・・総監の話しが本当なんだって・・・解っちゃった・・・

 ぼくはその場に座り込みそうになったけど・・・足に一生懸命力を入れて何とかたえた・・・だって・・・戦うのがハンターだから・・・これがハンターの仕事だから・・・命を落とすこともあるから・・・たえなきゃ駄目なんだもん・・・駄目・・・なんだ・・・







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