ミーナの昔話

ミーナの昔話



 最近はたいした事件もなくイレギュラーハンターたちも平和な日々をおくっていた・・・が、

「んっふっふ〜♪あんた達、ちょ〜ッと手伝ってほしいことがあるんだけどぉ♪」

 歳が近いこともあって、最近よく話をしていたアスト、レイヴン、ウィルドの三人は、ミーナの恐ろしいまでの笑みにあとずさった。

「(小声)・・・やっぱり・・・逃げたほうがいいかな?」

「(小声)・・・捕まった時のことを考えると、それは危険ではないか?」

「(小声)・・・だがこのまま大人しく言うことを聞くのも・・・」

 何やらぼそぼそと話し合いを始めた三人を見て・・・ミーナは強行手段に出た。

「はいはい、三名様ごあんな〜い♪」

「うぁぁぁぁぁぁ(泣×3)」

 引き摺られるように三人が連れて行かれた場所、そこは・・・

「ここって、ミーナの部屋・・・だよね?」

 連れて来られた先は、ある部屋の前・・・その扉には

『無断で入ったものには死あるのみv byミーナ』

 と可愛らしい文字でかかれたプレートが・・・

「さ、入った入った♪」

 押し込まれるように中に入る。

「これ・・・本当に女性の部屋か?(汗)」

 部屋の中はかなり汚れていて、奥のほうで誰かがごそごそと掃除をしているようだった。

「ヴィ〜シュヌ、掃除要員つれてきたよ〜♪」

 その声を聞いて奥で掃除をしていたヴィシュヌが出てきた・・・フリルのエプロンをつけて・・・・

「ミーナ・・・何回も言うけど、掃除なんてものは自分でしないと意味が・・・・って捕まっちゃったのは君達だったの・・・災難だねぇ」

 いや、あなたの格好のほうが災難なのでは?と思う三人、とりあえずレイヴンが代表で聞くことにした。

「・・・ヴィシュヌさん・・・その格好・・・(汗)」

 言われて、ヴィシュヌは苦笑いをしながらこう答えた。

「え?あ・・・ははっ・・・カッコ悪いでしょ?ここの掃除するときはこの格好じゃなきゃダメってミーナが言うんだよ・・・あははは・・・・・・はぁ・・・(泣)」

 ヴィシュヌの姿は、長い金の髪を後ろで三つ編みにして、その結び目には大きなリボン。スリットの入ったミニスカートにフリルのエプロンといった、いろんな意味で危なげな格好をしていた・・・いつもユーマと一緒にいるヴィシュヌは螺旋が任務でいない場合、ミーナの嫉妬を一身に受けてしまい彼女におもちゃにされてしまうのだ・・・

「・・・笑っていいよ〜・・・もう慣れたし・・・」

 だがあまりにも似合っていて逆に笑えない・・・まだれっきとした男性がしてた方がマシかもと一瞬考えるが、それは本気で気持ちが悪いので考えるのをやめた。

「とりあえずあんた達には寝室のほう・・・」

 ミーナが言いかけたとき、

「ちょ!!ちょっとミーナ!あの部屋をこの子達にやらせるつもり!?」

 ヴィシュヌが驚いて声をあげた、一体何にそんなに驚いているのかわからずに、三人はただ二人のやり取りを眺めていた。

「何かいけないかい?」

「いけないもなにも、男の子に洗濯させる気だったの!?」

「別にいいじゃないか、そのくらい・・・」

「君は良くても、この子達には教育上良くないって!!(汗)」

「そうかい?」

 まったく悪びれた風もなく、しれっと言ってのけるミーナにヴィシュヌは落胆した。

「はぁ・・・まったくもう・・・」

 そしてレイヴン達に向き直り、

「ごめんね。でも、もうここまで来ちゃったら逃げられないから・・・(^^;手伝ってもらえるかな?」

 遠慮がちにだが、もうどこにも逃げられないと宣告された三人は仕方なく掃除の手伝いをすることに同意した。

「ありがとう♪じゃあ、君達はこの部屋のゴミの分別お願いね。俺は寝室のほう片付けるから」

「がんばってねぇ〜♪」

「ミーナも手伝うの!」

「えぇ〜(嫌そう)」

「俺一人でやったら何処に何が有るか解らなくなるだろ?」

 そんな事を言い合いながら二人は奥の部屋と消えていった。残された三人は・・・

「とりあえず・・・・始めようか?」

「そうだな・・とっとと終わらせよう・・・」

「何で俺がこんなこと・・・」

 文句を言いながらも掃除を始めた。

 

 一時間後

 

「結構片付いたな・・・」

「ほとんど話もしないでがんばったもんねぇ」

「・・・・・・・・・・・(汗)」

「・・・?アスト・・?どうしたの?」

 あらかた片付いた部屋で、ゴミを袋に詰め終えたウィルドがアストの異変に気が付いた。

「おい、アスト?」

 レイヴンも声をかける。すると、今まで固まっていたアストがゆっくりと振り向いた・・・手に何かを持って。

「それ何?」

「ふぉとあるばむ・・・・」

「・・ミーナさんの・・・か?」

 コクリと頷く。

「・・・見ちゃったの・・・?(汗)」

「何だろうと思って・・・」

 なんとなく気持ちはわかる、怖いもの見たさというヤツだ。

「ま・・・まぁ、アルバムくらいだれでも持っているだろう・・・」

「中身が全て女性の写真でもか?・・・・」

 さすがにそれは・・・怖い・・・・(汗)

「ほとんどここに来てからの写真のようだが・・・一枚だけ、まったく知らない女性のものが有った・・・」

「知らない女性?・・・というよりお前・・・全部見たのか・・・(−−;」

 レイヴンの最後の言葉は聞かなかったことにして、アストは話し続けた。

「お前は知ってるか?この女性」

 ウィルドに先ほど見つけた写真を見せる。

「・・・・ううん、知らない。でも、綺麗な人だね、大人しそうで」

 写真に写っていたのは、『清楚で可憐』という言葉がぴったりと当てはまるような女性だった。

「お嬢様って感じだな」

 レイヴンも見ながらいう。

「この人・・ミーナさんとどういう関係だったんだろう・・・」

 あんまり考えたくないようなことが頭をよぎる・・・

「やっぱり本人に聞くのが一番だろうけど・・・」

「だれが聞きに行くんだ?」

「俺は嫌だ」

「俺もヤだよ・・・」

「俺だって嫌だ」

 しばらくそんな言い合いが続いて。

「しかたない、ここは・・・」

 レイヴンの提案。

「OK、それなら恨みっこなしだ」

「受けてたとう」

 それに同意する二人。

「負けたやつは文句を言うなよ」

「俺、結構自信あるんだよね・・・この勝負はもらったかな」

「そういう事は勝ってから言うんだな・・・いくぞ!!」

 向かい合って構える三人・・そして・・・

「「「ジャンケンポン!あいこでショ!!あいこでショ!!ショ!ショ!ショ!」」」

 ・・・何百回と続くあいこに三人とも疲れが見え始めた。

「はぁはぁ・・・いいかげん・・・諦めたらどうだ?」

「ふぅ・・・それは・・・・こっちの台詞だよ」

「・・・次で・・・決めてやる・・・」

 三人は呼吸を整えた・・・

「いくぞ!!ジャンケンポン!!」

 しばしの沈黙・・・

「いやったぁぁぁぁ!!!」

 とはウィルド。

「・・・フ、悪いな」

 とはレイヴン。

「・・・・クソ・・・」

 と言うわけで負けてしまったのはアスト・・・

「じゃ、よろしくね♪」

 能天気に言うウィルドにちょっとした殺意を覚えながら、アストは寝室のドアをノックした。

 コンコン

「・・・どうしたの?」

 中から出てきたのはヴィシュヌだった、アストはミーナでなかった事に安堵感を感じ、ミーナによく捕まっているこの人なら知っているだろうとヴィシュヌに聞くことにした。

「あの、こんな写真みつけたんですけど・・・この人は一体?」

 そう言って見つけた写真をヴィシュヌに渡す。

「写真・・・?あ!これ!!ちょ、ミーナまだこれ持ってたの!?」

 どうやらヴィシュヌは写真に写っている女性を知っているようだったが・・・

「何だい?五月蝿いねぇ・・・」

 奥から出てきたミーナに写真を見せるヴィシュヌ、それを見たミーナは・・・

「これ・・・・懐かしいねぇ、どうしたんだい?」

「掃除してたら出てきました・・・その女性は一体誰なんですか?」

 アストの問にミーナは嬉しそうに目を細めこう言った。

「これはね・・・昔のあたいさ・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「「「えぇぇぇぇぇぇええええええぇぇぇぇ!!!!!!!!!」」」

 少年三人の大絶叫!流石にいくら防音効果がしっかりしている部屋でも3人の声には負けたようだ・・・

「・・・・・ッたく、五月蝿いねぇそんなに驚かなくても良いじゃないか」

「え?だ・・・・だってその写真の人・・・全然・・・え?え?え?」

 流石にろれつも回らない、それほど目の前の女性と写真の女性の姿はかけ離れているものだったのだ。

「ボディチェンジしてもらったのさ、このまんまじゃ戦えないだろ?」

 写真をひらつかせながら言う。

「でも・・・どうして?」

 不思議そうに聞くレイヴンに頷く二人。

「そうだねぇ・・・・じゃあ、昔話でも聞かせようか」

 ミーナは美しい記憶を呼び覚ましているようだ・・・表情がうっとりとしている。ヴィシュヌは少年たちのほうに歩みより、耳打ちした。

「彼女の話し、かなり自分に良い様に脚色してるから俺が所々で補足していくね」

 

 

 そして彼女の昔話が始まる。

 

 

 あたいがまだこのお嬢の姿だった頃、心から愛した男がいてね・・・・その男もあたいを愛してると言ってくれていた。

 あたいは幸せだった・・・あたいの製作者・・・親父も優しい人でさ、レプリロイドのあたいを本当の娘の様に可愛がってくれたのさ・・・

 V『この辺はほんとの話し、彼女はその街で最も幸せなレプリロイドだって言われてたくらいだからね』

 ところがある日、あたいの幸せが一瞬にして消えちまったんだ・・・ある男のせいで・・・

 その男はあたいを連れ去り、親父に身代金を要求したんだ・・・親父はその要求に答え、あたいの為に全財産を男に渡した・・・あたいは嬉しくなって解放されたときに親父に抱きついたさ、けど・・・・その男はあたいたちを無事に帰すつもりなんか最初から無かったんだ・・・帰ろうとして背を向けた親父を・・・あの男は撃ち殺した・・・・心臓に一発さ・・・・もちろん・・・親父は即死した・・・・あたいを誘拐し・・・親父を殺したその男は・・・・あたいが愛した男だった・・・・

 V『これも真実・・・この事件は結構有名なはずだよ?残虐な殺人犯ってね・・・』

 男はあたいも殺そうとした・・・けど、いくらあたいが非戦闘タイプでもレプリエロイドを銃で殺すなんてことは出来ない・・・その時、あの男が言った言葉・・・今でも忘れられない・・・

『ちぇ・・・めんどくせぇ・・・まぁいいや。おめぇらコイツ好きにして良いぜ、レプリロイドだから犯しても罪にもなりゃしねぇしよ』

 笑いながらあいつは言った・・・・あたいの事を愛していると言ったあの口で・・・笑いながら言ったんだ・・・

 あたいは死を覚悟した・・・大好きな親父を守れなかった事が悔しかった・・・こんなゲス野郎を愛していると思っていた事が悔しかった・・・だけど・・・あたいにはもうあいつ等におもちゃにされて死んでいくしか道が無かった・・・

 けど、そんなあたいを救ってくれた人がいたんだ!!

 V『はい、来ました・・・ここからは俺の解説付きね・・・』

 あの人は颯爽と現れ、奴ら倒していったんだ!まるで豹のようなしなやかな動きに、猛虎のような激しい攻撃!!戦いの事をまったく知らないあたいでも、その動きには惚れ惚れしたねVv

 V『別に颯爽と現れたわけじゃない、ただ通りすがったとき騒がしいと思って見に行ったんだ・・・俺が・・・そしたら女性が襲われそうだったから一緒に助けに行ったの、どうやら俺のことはまったく目に入ってなかったみたいだけどね・・・(苦笑)』

 あの人はやつらを全員素手で倒しちまったんだ・・・そんで倒れてるあたいに手を差し伸べて・・・

『大丈夫かい?』

 って・・・カッコ良かったなァVv

 V『もう気付いてると思うけど、あの人って言うのは母さんの事ね。それを考えてもらったら解るけど、母さんが「大丈夫かい?」何て言うはずが無い(ーー;あの時たしかに手を貸して立たせてあげてたけど、母さん何も言ってなかったもん・・・』

 でもあの男はまだ気絶していなかった・・・殴られて口に滲んだ血を手の甲でぬぐうと、ナイフであの人に斬りかかったんだ!!

 あたいは恐怖で動けなかった・・・けど、あの人は気配で察知したのか振り向きもせず裏拳で奴を倒しちまったのさ!

 V『・・・恐怖で動けなかったねぇ・・・実際はキャーキャー物凄く五月蝿かったんだよ?まぁ、女の人だから仕方ないかもしれないけど・・・ただ・・・彼女、母さんの腕を掴んで離さなかったんだ。だから結果的には犯人を裏拳で倒した事になるけど・・・アレは俺もビックリしたなぁ・・・』

 流石にあの男も完璧に伸びちまった。あたいはお礼を言おうとしたけど上手く言葉にならなくて・・・そしたらあの人は優しくあたいに自分の上着を掛けてくれて、こう言ったんだ・・・

『もし・・・行く場所が無いのならハンターベースに来るが良い・・・』

 もう、愛の告白を受けた気分だったよ!!私のもとに来いって言われたようなもんだからねぇVv

 V『はいはい、物凄い勘違いです・・・母さんが言ったのは「ハンターベースでなら主人のいないレプリロイドも普通に暮らしていける」的な事を言ったのであって、間違っても自分のもとに来いとは言っておりません〜(半分投げやり)』

 それからあたいは親父の葬儀を盛大にやって、残った財産で自分のボディを改造したんだ・・・大切な人を守れる様にね・・・

 

 

 

「さぁ、これであたいの昔話はおしまいさ」

 なんとなく顔を見合わせる3人の少年達・・・

「なんだか・・・(汗)」

「悲しい話なのか・・・な?(汗)」

「何とも言えんな・・・・(汗)」

 どう答えて良いか本気で考えていたが、ウィルドがなんとなく思った事を口走った。

「・・・もしかして・・・ミーナが男に興味が無いのって・・・その事件のせい・・・?」

「・・・そーゆー事・・・とくに螺旋みたいな野郎はいけ好かないねぇ」

 ウィルドの問にそう答えたミーナにヴィシュヌのつっこみが・・・

「・・・それは母さんと螺旋が恋人ど・・・・」

「何か言ったかいヴィシュヌちゃん・・・?(怒)」

 ・・・入りそうになったが強制的に止められる。

「どうやらあんたにはもう少しお仕置きが必要のようだねぇ・・・フフフフフ・・・・(怪笑)」

 ヴィシュヌの顔が引きつる・・・

「な・・・何をする気なのかなァ〜?」

 後ずさりながらドアまで移動する・・・密かに少年達も一緒に・・・そして

「逃げろ!!」

 ドアを勢い良く開け走り出す!後ろの方でミーナが何か叫んでいるのが聞こえた・・・・

 そして走りながらヴィシュヌが一言・・・

「・・・俺、明日生きていられるかな・・・?(泣)」

 その問に答える事が出来る者はいなかった・・・

 

 END







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