海!



夏真っ盛りである。

どこもかしこも「あちぃ、あちぃ」の季節である。

書いてる作者もいっぱいいっぱい。

そんな季節だからこそ。

ハンターベースの諸君は海に来たのであった。

今日は、そんな中の、一組の男女のお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天気がよくてよかったな」

「そうですね」

周りに荷物をはべらせながら、シグナスとクロードが話している。

シグナスの笑顔は7割増だ。

「あのエセ猫がいないからな、私も安心できる」

いない、っつかあんたが飛ばしたんじゃんよ。

誰もがそう思う中、クロードは苦笑だけですませた。

彼の優しさが出ている。

「ところで、お前は行かないのか、クロード」

「えっと・・・海・・・というか、暑いのが苦手なんで・・・」

「・・・そうか、悪いことをしたな・・・」

唸るシグナスに、クロードは慌てて気にしないでください、という。

遊んでいる少年少女達はとても楽しそうだった。

クロードはそれを見て微笑む。

その場所から近いせいか、声が聞こえてきた。

 

 

 

   おい! 鈴、それはやばい! 死ぬ、死ぬよ!!

 

   んぁ? 聞こえないなぁ、みんな〜、ウィルドどっちのほう?

 

   鈴、右に65°だ。・・・そう、振り下ろせ。

 

   サンキュ〜、カズミ〜。いっくぞぉぉ!

 

   だぁぁ、待て! 振り下ろすな! っていうか誰だよ、寝てる間に俺埋めたの!!

 

 

 

微笑ましすぎる内容だった。

そして近づきたくなかった。

ウィルドが生命の危機に瀕していたが、助けてくれそうな澪やアリス、ショット達は海の中だった。

例えクロードが今から行っても助けられないだろう。

アリスが溺れているようにも見えたが、レンが救助していたので一安心だった。

クロードは、MDの電源を入れ、再び手元の本、聖書に目を戻す。

この暑い中本を読んでいられる彼はツワモノだった。

「ところで総監、行かなくて良いんですか?」

「・・・?」

「闇姫さん、寂しそうにマオちゃんと砂で遊んでましたよ」

バイブルから目を逸らさずに言う。

隣で、荷物を頼む、といって走っていった人がいた。

一人、MDを聞きつつ読書。

小さく溜息をつくクロード。

最近はStar Angelsの活動が忙しく、ハンターベースにあまりいなかったからか、微妙な疎外感がある。

簡単に言うと学校を1日休んだ次の日のような物である。

「なにしてるの?」

不意に、上から声が降ってくる。

見上げると、整った顔が、クロードを覗きこんでいた。

「っと・・・見ての通り、読書です」

「泳がないの? 気持ち良いよ?」

「いえ、僕は暑いの苦手なので・・・。ヴィシュヌさんは行かないんですか?」

今度は、逆に問いかけるクロード。

ヴィシュヌは苦笑して、口を開く。

「俺はもう泳いできたからね」

そう言って、隣にいる物体を撫でる。

その瞬間、クロードに寒気が走る。

ゆっくり。

ゆっくりと隣の物体に目を移す。

 

「・・・うわぁっ!?

 

慌てて立ちあがり、後ろに飛びのく。

ヴィシュヌは不思議そうにクロードを見た後、自分の隣にいる生物をみて苦笑する。

「シヴァ、ちょっと向こうで遊んでて?」

その言葉を聞くと、シヴァは一鳴きして、浜のほうへ走っていった。

そして食われるブラフマー。

どこまでも期待を裏切らない人物である。

「ごめんね、さっきから一緒にいたから・・・」

「・・・だ、大丈夫です・・・」

動力炉を抑えながら座りなおすクロード。

その隣にヴィシュヌも座る。

会話もなく、時間が過ぎていく。

クロードは瞳を閉じると、イヤホンを外し、バイブルを閉じる。

「このまま・・・」

「え?」

不意に呟いたクロードに、ヴィシュヌが反応する。

「このまま、ずっといられたらいいな・・・」

「そうだね・・・」

「平和で、争いがなくて・・・ヴィシュヌさんと、ずっと・・・」

その一言に、ヴィシュヌの顔が赤く染まる。

言った張本人であるクロードも、耳まで真っ赤になっていた。

「・・・俺も・・・」

そこぉ! なにしてるんやぁぁぁぁぁ!!

この暑い中、毛皮を被ってる人物が走ってくる。

否、シヴァに頭からガブリと食われたブラフマーが。

流血してまで妨害しに来るあたりに漢気を感じる。

「な・・・なにって・・・」

「わいのヴィシュヌはんに手を・・・」

 

ガブガブ。

 

シヴァの噛み付きに力が篭る。

主人のことを思っての行動。

犬は義理堅い。

そして主人思い。

しかしブラフマーのことは考えてない。

いだだだだだだ!!!

突然のパワーアップにのた打ち回るブラフマー。

やがて浜の方に走っていった。

「・・・なにがしたかったんだろ・・・」

クロードは溜息交じりに呟く。

自分の勇気の全てを込めた告白が打ち砕かれた。

その事実でもう意気消沈していた。

隣のヴィシュヌも立ち上がると、ゆっくりと歩き出す。

「俺、もう一泳ぎしてくるね」

「あ、はい・・・」

自分の行動が全て空回りな気がして、溜息をつくクロード。

ふと、頬に何かが触れ、耳元でなにかを囁かれる。

 

 

 

「俺も・・・クロードくんと一緒にいられたらいいと思うよ・・・」

 

 

 

一瞬だけ見えたヴィシュヌの顔は真っ赤になっていて。

頬に触れたものがなにか理解したクロードも真っ赤になって。

 

 

 

恋する男女の。

  一夏の出来事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は続きとかあるんだよね。(何)

 

 

 

 

 

<END>





感想

月臣様に誕生日プレゼントとして頂いた小説その1でございますー!!!

ヴィシュヌとクロード君のお話。この、くっつきそうでくっつかない感が凄くイイです!

って言うか、ウィルドとブラフマーがえらい目にあっててステキです(大笑)





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