すのー・ほわいと おぶ りばーす (前編)
ハンターベース内にある一室で、少年の絶叫が響き渡る。 「いくらエックス先輩のたのみでも命令でも!!こればっかりは嫌ッス!!」 「・・・でもね、ハルト・・・もう決まってる事なんだよ?」 叫んでいるのは第7空挺部隊に所属しているハルト。そして、彼の前で宥めるように話しているのは第17精鋭部隊の隊長エックスだ。 「確かにこの劇の配役には、俺も文句を言いたいところもある。でもね、キミにその役をやって貰わないと困るんだ・・・」 「何で俺じゃないとダメなんっすか!?俺なんかよりももっと適任の人がいるでしょう!?それに、俺があれ着ても気持ち悪いだけっすよ!!」 そう言ってハルトが指差したのは・・・ディズニーアニメ『白雪姫』で、主人公の白雪姫が着ていたのとまったく同じデザインのドレス。 何故2人がこんな事を言い合っているのかというと・・・最近はイレギュラーも少なく、かなり平和になったので、ハンターとしての仕事もほとんどなく、この大人数で何か出来る事はないかと探していたところある隊員の提案により数ヶ月前から、みんなで劇をやろうと言う話は決まっていたのだ。が、何の劇をするのか、配役はどうするのか、と言った事がなかなか決まらず、ついこの間ようやく『白雪姫』をする事に決まったのだ。 そして、今もめているのは配役について・・・普通にやっても面白くないからと、女性人(おもにエイリアやミーナといったある意味最強な方々)の提案により、色々反転してしまっているのだ。 それで、主人公の白雪姫に抜擢されたハルトだったが、流石に『ドレスなんか着れるかー!!』と断固拒否し続けていて、彼の憧れの存在であるエックスが説得に当たっているところなのである。 「とにかく嫌なものは嫌なんで・・・・・」 ゴス!! 突如した鈍い音、それに少し送れてハルトが頭を抱えてしゃがみこんだ。 「・・・いい加減にしろよ・・・」 「あ・・・ゼロ」 鈍い音の正体はゼロがハルトをゲンコツで殴ったために発生した音。 「せんぱぁ〜い・・・酷いッスよぉ、なにもゲンコでなぐらな・・・・・・」 涙目になりながら、頭をさすって振り向いたハルトは絶句した。何故なら彼を殴ったゼロの姿が・・・・ 「それにしても・・・綺麗になったねぇ、よく似合ってるよ」 「・・・嬉しくねぇ」 「あはは、そりゃそうだろうね」 苦笑いをしながらゼロと話をするエックス。ハルトはと言うと、ゼロの姿に唖然としつつ、なんでこんなに平然と話が出来るんだ!?とエックスとゼロを交互に見ていた。 ゼロは今・・・フリルの沢山付いた煌びやかなドレスを着ているのだ・・・髪型もいつものストレートではなく、ウェーブをかけられティアラまで付けている。 「・・・なんだよ・・・」 ハルトの視線に気付いたゼロが見下ろしながら尋ねる。 「あ・・・いえ・・・」 「ハルト、お前この役降りてみろ・・・ただじゃぁおかねぇからな・・・・」 ゼロの脅しの入った睨みに身を強張らせる。今の姿が美しいだけに、いつもとは違う恐ろしさが伝わってきたのだ。その時ある事に気が付いたハルトは、ゼロに聞こえないようにエックスに尋ねた。 「・・・エ・・・エックス先輩・・・ゼロ先輩、なんか機嫌悪くないっすか?」 女装させられているのだから、機嫌が悪いのは当たり前なのだが・・・なにか・・もっと違う原因があるような・・・ 「ああ・・・それはね・・・」 コンコン エックスが説明しようとした時、何者かがドアをノックした。 「誰だい?」 『マリアで〜す♪エックス兄ちゃん、入ってもいい?』 ノックをしたのはエックスとゼロの妹、マリア。ドアの向こうからその声を聞いた途端、入り口付近にいたドレス姿のゼロは慌ててどこか隠れる場所は無いかと探し始めた。 「・・・ああ、いいよ」 そんなゼロに苦笑しつつ、エックスが返事をすると・・・ 「失礼しま〜す♪わぁ!ゼロ兄ちゃんきれーいVv」 ドアがあいた途端、ゼロを見たマリアは目を輝かせて言う。純粋な眼差しでマリアにそう言われ、ゼロはとても複雑な表情を浮かべた。 「で、どうしたんだい?突然」 今マリアはゼロの影に隠れて見えない状態になっていたのだが、エックスがそう言うと、ゼロの横からひょこっと顔を出し、にぱっと笑って・・・ 「えへへ・・・・じゃーん!どう?似合う?」 口で効果音を言いながらエックスとハルトの前にその全身を現し、ポーズを決める。 「マ・・・マリアちゃん・・・・その格好もしかして・・・・」 マリアの格好はどこからどう見ても『王子様』・・・ディズニーの、と言うよりは微妙に宝塚っぽいのだが・・・ 「ぼく王子様の役なんだって♪お芝居って初めてするから凄く楽しみなんだ♪」 物凄く嬉そうに微笑むマリアを前にして、ハルトの血の気が一瞬にして引いた・・・ 「そう言えば・・お姫様の役って誰がするの?ぼく、まだ聞いてないんだけど・・・」 その言葉に、ゼロとエックスの視線がハルトに向けられる。それに気がついたマリアもハルトを見つめる。 「ハルトくんが・・・お姫様?」 小首を傾げて聞いてくる彼女を目の前にしてはもう・・・ハルトは覚悟を決めるしかなかった・・・ ちなみに、ゼロの機嫌が悪かった原因は見てのとおり、大事な妹が『王子様』役になってしまって、さらに彼女がそれを嫌がるどころか喜んでいる所にあったりする・・・彼女の悲しむ顔は見たくない。妹思いのお兄ちゃんならではの苦悩であった。 そして、公演当日・・・ 「そういえば・・・継母の意地悪な女王役は誰なんっすか?」 白雪姫のドレスに身を包んだハルトが、隣りで準備をしていたエックスに尋ねた。 「え?・・・実は俺もまだ聞かされてないんだよ・・・一体誰になるんだろう・・・」 そんな事を話していた2人に、ナレーション役のエイリアが話しかける。 「ほら2人とも、もうすぐ始まるわよ。台詞とかは大丈夫なの?」 「バッチリっす!」 グッ!っと親指を立てて言うハルトに、エックスは・・・ 「あんなに嫌がってたのにねぇ・・・」 苦笑しながら言う。 「引き受けたからにはしっかりやるっす」 エックスに言われ、ハルトは顔を赤くしてそっぽを向きすねたように言い返した。 「そろそろ始まるよー!!皆スタンバイして!!」 もう一人のナレーション役のヴィシュヌが大きな声で言う。 「じゃ、気合入れていきますか!!」 会場に始まりを知らせるブザーが響き渡った・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ある国に、とても可愛らしい王様と、それはそれは美しい王妃様が住んでいました。王様の名前はエックス、王妃様の名前はゼロ。二人はとても仲が良かったので、すぐにお姫様が誕生しました。 お姫様の名前はハルト、ハルト姫はすくすくと成長し。13歳になった姫は勇敢でとても優しく。白雪のような純白のアーマーが良く似合っていたので、白雪姫と呼ばれ皆に親しまれておりました。 ですが白雪姫が15歳になったある日・・・ 「・・・俺が・・・行かなくちゃならないんだ・・・」 「ゼロ・・・やっぱり俺が行くよ!!」 「エックス・・・お前はこの国にのこってくれ・・・お前がいってしまったら・・・・誰がこの国を守る?」 「もう、戻ってこないような言い方はやめてくれ!」 「俺は絶対戻ってくる!このぐらいで・・・死んでたまるか!」 「わかったよ・・・ゼロ・・・信じて・・・待つよ・・・必ず、戻ってこいよ・・・ゼロ・・・」 「ああ・・・・・行って来る・・・」 「ゼロ!必ず・・・戻ってこいよー!!ゼロ!ゼロッ!!ゼローッ!!!」 こうして、王様の熱烈な見送りを受け。王妃様は隣国へ助太刀のために旅立ってしまいました。 王妃様がいなくなってから、王様と白雪姫は2人で国を守っていましたが・・・・まるで王妃様がいなくなるのを見計らったかのように新しいお妃様としてこの国に現れた人物が・・・ 『し・・・シグマぁ!?』 その人物を見た瞬間、王様と白雪姫は声を合わせて驚いていました。それもそのはず、2人の前に現れたのは、あの悪名高いシグマだったのです! 「い・・・いやだぁぁぁぁ!!!!いくらなんでもシグマがお妃なんて・・・」 「ふふふ・・・安心しろ、私が来たからにはこの国はもう安泰だ・・・」 なにやら自身満万にそう言ってのけるシグマでしたが・・・ 「いぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!!!!(T□T;ごめん白雪姫!!俺はもうダメだぁ!!」 「 ええ゛!?せん・・・じゃない!お父様!?」そう言って王様は自室に閉じこもってしまいました。こうして、この国の女王となったシグマは国民達を洗脳して自らの理想国家建設にとりかかったのです・・・ 数ヶ月後・・・ 薄暗い部屋の中、大きな鏡の前に立つ一人の人物・・・ 「鏡の中に閉じ込められし男よ・・・鏡の聖霊よ・・・その姿を現し、我が問いに答えよ・・・」 鏡の前で両手を広げ、そう言ったのは女王シグマ・・・その声に答えるように画が見の表面がゆれ・・・映し出されたのは・・・ 『お呼びっすかー?女王様・・・』 なんとも投げやりな態度で出てきたのは鏡の聖霊、ヴァヴァ。 「この世でもっとも美しい・・・肉体の持ち主は誰だ!?」 そう言って鏡の前でボディービルのポーズを決める。ヴァヴァは口を押さえて何かを我慢しているようでしたが・・・ 『うえ・・・・えーっと・・・確かにあんたは美しい。でも、今はあんたよりも美しい者がいる(棒読み)』 「何だと!?それは一体誰だ!?」 ヴァヴァの答えを聞いた瞬間、女王は鏡に詰め寄りました。 『っぎゃーーーー!!!!!その顔あんまり近づけんなーーーーー!!!!!!!!(T□T;』 女王はとりあえず鏡から離れます。 『・・・・ど・・・動力炉に悪い・・・・コホン・・・・この世でもっとも美しいのは・・・勇敢でとても優しく。白雪のような純白のアーマーが良く似合っている人物・・・(棒読み)』 「それは・・・」 『それは白雪姫です(棒読み)』 「・・・おのれ・・・白雪姫・・・」 女王様は、憎しみのこもる瞳で窓の外に目をやりました・・・
「っだーーーー!!!何で俺が雑用ばっかりしなきゃならねーんだぁ!!」 女王様の洗脳にかからなかった白雪姫は、まるで下女のように汚れた服を与えられ、毎日のように雑用をさせられておりました。 「・・・・はぁ・・・お父様はずっと部屋に閉じこもったきりだし・・・俺・・・どうしたら・・・」 落ち込む白雪姫の肩に真っ白なハトがとまり、彼女を慰めます。心の優しい白雪姫は、動物達と心を通わせる事も出来ました。どんなに辛い時でも、動物達が彼女を慰め、励ましてくれていたのです。 「・・・サンキュ・・・そうだよな、落ち込んでても仕方ないよな!」 元気を取り戻した白雪姫は、再び掃除を始めます。そんな彼女の耳にいつもこの時間に聞こえる美しい歌声が・・・ 「・・・あの人だ・・・」 白雪姫が今までがんばってこれた理由・・・動物達の励ましと・・・もう一つ・・・いつも同じ時間に現れる美しい歌声の人・・・まだ顔を見た事はないけれど、白雪姫の心はその歌声に癒されておりました。 「・・・今日は・・・少し勇気を出してみようかな・・・」 白雪姫は、よしっと気合を入れると、塀を登り始めました。 塀の外 「ん〜・・・・皆おはよ、今日もいい天気だね♪」 塀から少し顔を出しゆっくりと辺りを見まわした白雪姫は、白馬に乗った可愛らしい王子様を発見しました。 王子様は、小鳥達に挨拶をしてまたあの歌を歌い始めました・・・いつも聞いているあの歌・・・
いつの日にか素敵な人が現れる その日を私は夢に見る 夢に見るの素敵な人が 私の前に現れるその日を 夢のように・・・私に愛の言葉を囁いて・・・
その歌声に聞き入っていた白雪姫は、王子様が自分を見ていた事に気がつきませんでした。 「・・・キミは・・・」 「え?あ!!うわぁ!!」 王子様に声をかけられた事に驚いた白雪姫は、足を踏み外し塀から落ちてしまいました。 「いってててて・・・」 思いっきり身体を打ちつけてしまった白雪姫は、涙目になりながら腰をさすっています。 「・・・だ・・・大丈夫?」 そんな彼女を心配して塀を飛び越えてきた王子様が心配そうに見つめます。 「だ・・・大丈夫、大丈夫・・・俺、結構頑丈だから」 そう言って王子様を安心させるように、にかっと微笑みました。王子様も、それにつられるように微笑みます。 「あ・・・あの・・俺の名前はハルトっていうんだ!!・・・君は?・・・」 「ぼくの名前はマリア、よろしくね♪」 白雪姫と王子様は、瞬く間に仲良くなりました・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 舞台袖 「あああああ!!!マリア!!それは近づきすぎだぁ!!ハルトォ!!てめぇマリアにそれ以上くっついてみろ・・・ぶっ殺・・・」 「ゼロ!!これはお芝居なんだから落ち着いてぇ!!」 暴れだそうとするゼロを必死で抑えるエックス。その気配を感じ取ったハルトは冷や汗をたらしながら何とかお芝居を続けていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
一方、王子様と仲良くしている白雪姫の姿を見ていた女王シグマは・・・ 「・・・白雪姫を抹殺しろ・・・殺したという証拠のために・・・この箱にやつの動力炉とエネルギータンクを入れてこい・・・」 「・・・そういう事は私の仕事ではないが・・・」 女王は猟師のユーマを呼び出し、白雪姫の殺害を命じました・・・・・・ 猟師のユーマは、女王の命令どおりに白雪姫を森の奥へと連れて行き、彼女に銃口を向け・・・ ガウン!! 「どわぁぁぁ!?あ・・・危ないじゃないっすかぁ!!ッてか、今本気で狙ってませんでしたか!?」 「そう言う命令を女王に下されたのでな・・・」 「ゆーまさぁん!!(T□T;」 「・・・冗談だ。わかっている・・・すまなかった白雪姫、いくら女王の命令でも私には・・・お前を殺す事は出来ない・・・さぁ、奴に見つからないように森の奥へと逃げるんだ!!」 優しい白雪姫を殺す事が出来なかった猟師は、彼女に森の奥へと逃げるよう言いました。 「(ホッ)で・・でも・・・それじゃ、あんたが・・・」 「大丈夫、なんとか誤魔化すさ・・・さぁ!行け!!」 そして白雪姫は、無我夢中で森の中を走りました。一度も休まず走りつづけたので、だんだんと足が重くなり・・・とうとう動けなくなってしまいました。 「・・・くそ・・・こんなところで・・・・・?あれは・・・」 疲れ果てた白雪姫の視界に飛びこんできたのは。一軒の大きなお家・・・ 「・・・こんな・・・森の中に・・・?」 不審に思いながらも、もうくたくただった白雪姫は、野宿よりはまし!とお家に近づきました・・・ コンコン 「だれか・・・いませんかぁ〜?」 恐る恐る扉を開けた白雪姫でしたが・・・ 「へぇ・・・キレイじゃん・・・」 そのお家の中は綺麗に掃除されていました。テーブルはピカピカ、床も姿が写るほど・・・ 「・・・すげぇ・・・鏡みたいだ・・・」 家の中をうろうろしているうちに、白雪姫はあることに気がつきました。 「ここにある物・・・全部でかいな・・・」 そう、もともと入り口からして大きなお家でしたが、椅子や食器といったものまで、普通の物より大きかったのです。 「・・・座って足がつかないってのは・・・なんとも居心地悪い(^^;」 椅子に座ってみた白雪姫でしたが、その大きさに驚いてしまいました・・・と同時に・・・ 「・・・・アフ・・・疲れた・・・もう・・・眠い・・・・」 全力で走ってここまでたどり着いた白雪姫は、とても疲れておりました。 どこか眠れる場所はないかと2階へ上がりました。 「・・・ここも・・・やっぱりでかいな」 二回の部屋の中には七つの大きなベッド。それぞれに名前が書いてあります。 「・・・名前?・・・もう・・いいや・・・おやす・・・み・・・・」 そのまま、白雪姫は一つのベッドに倒れこむようにして眠りにつきました・・・
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