To you who are not any longer...
「おい・・本当にここなのか?」 救助用のヘリの中で、操縦士がレーダーを見ている隊員に話しかけた。 「間違い無いですよ、二人のシグナルがちゃんと表示されてますしね」 「ってことは・・・二人とも生きてるんだな・・・ユーマさんも無茶するぜ・・・」
ヘリの音を遠くに聞きながら・・・本来の姿に戻ったヴィシュヌは仰向けに倒れ、ユーマはその横で煙草を吸っていた・・・ 「・・・・・・・・・・・かあさん・・・」 小さな声で呼ばれ、ユーマは振り向いた。彼女は優しく微笑み、ヴィシュヌの頭を撫でる。 「起きたのか・・・どうした?」 ヴィシュヌは目を閉じたまま口だけを動かす・・・ 「俺・・・初めてだったんだ・・・・母さん以外にあんなに心を許せる人が出来たの・・・俺・・・あの人がいれば良いって・・・・本当に思ってったんだ・・・・」 ヴィシュヌはユーマの手に頬を寄せる・・・ バタバタバタバタバタ・・・・ ヘリがだんだん近づいて来た。ユーマはヴィシュヌを抱き上げ、ヘリの着地地点付近へと向かう・・・ 「かあさん・・・最後に聞いて良い?」 「ん?何だ?」 「どうして俺は母さんに勝てなかったの?」 「・・・簡単なことだ・・・母という者はこの世で最強なんだよ・・・愛する者を守らねばならんからな・・・・」 そして二人はヘリに乗り、ハンターベースへと帰還した・・・
――― ヴィシュヌの処分について、ハンター上層部で口論があったが・・・ユーマの『もしあの子が完全にイレギュラーとなれば・・・その時は私が責任を持って処分する・・・』と言う発言に誰も何も言う事が出来なかった・・・イレギュラー化したヴィシュヌを止める事が出来るのは・・・ユーマだけであろうとわかっていたから・・・―――
レプリフォース大戦から数週間目 ― レプリフォース墓地 ― 「ごめんね・・・来るのが遅くなっちゃった・・・・」 ある墓標の前に立つのは、純白のアーマーを纏い長い金の髪を風に揺らす少年とも少女ともつかぬ人物・・・ヴィシュヌだ・・・手に持っているのは真紅のキクの花・・・ 「なかなか気持ちの整理が出来なくってさ・・・・・・・・・」 ヴィシュヌは泣き顔とも笑い顔ともつかぬ顔で墓標に向かい話し続ける・・・ 「貴方は・・・私の笑顔が好きと言ってくれた・・・だから、私は微笑み続けます・・・それに・・・貴方は私に教えてくれましたね、私の笑顔が傷付いたハンター達の癒しになっていた事を・・・私が微笑む事で癒される人が少しでもいるのなら・・・・私は微笑み続けます・・・・」 持って来たキクの花をそっと供える。 「愛しています・・・・貴方を・・・心から・・・愛しています・・・・・」 そして墓標にキスをした・・・・ふと、その墓標から目をそらすと、後ろの茂みが不自然に揺れている。 ガサガサッ!! 茂みから、何か黒いものが飛び出してきた。 「うわっ!!」 その黒いものに激突され、ヴィシュヌはしりもちをつく。もこもことしたその黒いものは、良く見ると子犬タイプの『アニマロイド』だった。 「びっくりした・・・・君、何処から来たの?」 「アン!!」 子犬はしっぽを振り、ヴィシュヌの顔をなめる。 「あ、こら・・・うわっと・・・」 かなり懐かれているらしく、なかなか大人しくしてくれない。ヴィシュヌはそんな子犬をなんとか大人しくさせると自分のコードを子犬につなげ、識別Noを調べる。誰かに飼われているならすぐにわかるはずだ・・・が。 「・・・該当Noなし・・・か・・・君、野良なんだね」 子犬を抱き上げる、野良のアニマロイドは見つかればすぐに処分されてしまう・・・ 「俺と一緒に来る?」 「アン!アン!!」 嬉しそうにしっぽを振り、答える子犬を見て・・・ヴィシュヌの顔も本来の笑顔を取り戻し始める・・・ 「じゃあ、名前・・・決めないとね・・・・」 ・・・あの人と同じ・・・漆黒の毛並み・・・ 「よし、決めた!君の名前はシヴァだよ」 そう言って墓標に向き直り・・・ 「シヴァ・・・貴方の名前、この子に付けさせてね・・・それじゃ・・・また、来るね・・・」
貴方の声も、貴方の温もりも・・・・・・ もう二度と感じる事は出来ない・・・ けれど・・・ 私は微笑み続けましょう・・・ 貴方が教えてくれたから・・・ 私は微笑み続けましょう・・・ 愛しい貴方の教えのままに・・・・・・
The language of love is sent to you who are not any longer...
END |
||